第三章 こごしき道
第一話 歌垣 〜うたがき〜
十一月。
オレは
今年は、奈良の都でお偉い
凶作でもないのに、さんざんだったぜ。
でも、奈良の都の事情より、郷のオレ達には、今夜の方がずっと重要だ。
ここは
山の下で、実りの祭りが始まって、時間が随分たつ。十五歳までの
ご機嫌な気分で、歌垣に参加する
山の上、大きな
歌垣に参加する者たちは好きにその龜から浄酒を呑んで良いため、そうしないと、事前に
山の上、ひらけた場所では大きな焚き火がたかれ、火を中心に輪となり、
「くずのぉぉぉは、さゑさゑ、や!
えし、をォォどこぉなる、や!」
葛の葉 さゑさゑ や
葛の葉 さゑさゑ や
(ざわつく葛の葉の、良く作られた小さい寝床よ、
ざわつく葛の葉のように、心が揺れるあたしよ、
ざわつく夜に、独りで寝ろと言うの……。)
「なあ、オレと呑もうぜ。
別に浄酒を呑まなくたって良い。
ほら、今しも。
踊る男を品定めしてた女が、
「
「
さ
と決まり歌を返した。
はい、これで、今宵、二人は
踊っている男女が、ちらちらと
「ちゃんと
と女が言ったのが聞こえた。
向かうのは、焚き火の火がほとんど届かない
事前にあの
オレも、そのように、寝床は用意済みだ。
やる事は一つ。
そう……、ほら。
焚き火の側で唄い踊る男女の声に混じって、もう、聴こえてきたぜ。
歌垣。年に一回の、実りの祭りの夜。
十六歳以上の、婚姻相手を求める男女が。
いや、婚姻しなくても……、ただ求めるだけでも。
好き者なら、
こうやって、あちこちの藪から、燃え立つ声をあげるのさ。
この歌垣当日、気に入ったヤツと、藪に入っても良い。
でも、人気がある男女は、祭りのもっと前日から、ご予約が殺到する。
あらかじめ、歌垣の夜は、自分を選べ、と約束をし、
オレもそうしてる。
ふぅ……。
* * *
小さい目、大きな口、丸みのある顔の輪郭。
何より素晴らしいのは、その体つきさ。
去年、はじめて歌垣を迎える前には、郷の
オレも、
「なあ、オレの家が、どれくらい田を持ってるか、わかってるだろ。
婚姻してやったっていいんだぜ。
歌垣では、オレの手布を腕に巻いてくるんだぜ、他の男の手布なんか、間違っても、巻いてきちゃあいけねえぜ。比多米売。」
と手布を渡した。比多米売は、きらきらと輝く目でオレを見たが、口の端をつりあげて、
「どおしよっかなあ……、ふふ……。」
とか言ったので、冷や冷やした。
去年、歌垣で比多米売を
歌垣が過ぎ、郷に通常の日々が戻っても、オレは比多米売の良い味が忘れられず、満月の夜、比多米売に
比多米売は良い女だ。
さらにでかい胸は、重さゆえ少し下に垂れぎみで、真ん前というより、左右に向かって大きくせり出している。
とにかくたわわなので、上下に揺れると、たっぷん、たっぷん、と水の音でもしてきそうなくらいだ。
初めて脱がした時の感動は、ちょっと忘れがたい。
人の背丈ほどある
あんまり丹念にしゃぶったので、
「ん……、
と比多米売が呆れたように言った。
「なあに言ってんだよ。このでかさに逆らえる
つまむ。
「おまえ、すごく良い物を、ここと、ここに、持ってるんだぜ。」
揺さぶる。
「んあ……。そう……。」
比多米売は納得したようだった。
すっかり比多米売を気に入ったオレは、
「婚姻してやっても良いぜ。」
と言ってやったが、比多米売は、
「ふふ……。」
と笑うだけで、何も返事をしない。
正直、何を考えてるかわからない
まあ、すぐに
そうやってオレは、何度も比多米売を
いろいろ教えてやった。
「こう?」
とオレの上に乗っかり、自分で腰を動かす比多米売に、
「違う。こう。」
と比多米売の腰を手でつかみ、動き方を教えてやった。
さっきまでと全然違う激しさに、
「うああっ……!」
「おいおい、動きを止めちゃいけねぇぜ。」
オレは柔らかい腰を
オレの
それを繰り返せば、
通りて。
濡れ。
腹の上の身体は弾み。
声は燃え立ち。
弾み。
オレはゆっくり手を離す……。
比多米売は、たしかに、笑っていたんだ。
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