第二十三話 亀卜 〜きぼく〜
* * *
広場の地面に焚き火が
青みがかった
近くに
左右には、
二人は
二人の息子も、
見物客がわらわらと取り囲み、輪を作る。
「
「なんでも当たるそうだぞ!」
見物客は好き好きに
「
「来年の実りはどうだ。」
舞台では、
───※きりきり
「整いましてございます……。」
四十過ぎの
「ひとつ、来年の
右手を
ジジ、と骨の焼ける音がする。
すぐに、ピシリ、と
「大きは無し。」
周囲に良く聞こえる声で
「ひとつ、実りは豊かか。」
女官が
そして、種籾ごと亀甲を火に
───
くはや ここなりや……
また、
「
ほーっと皆が胸を撫で下ろす。
「せっかく、私の息子二人が大人の名となったのだ。広河、大川、何か好きに
思いがけない広瀬の言葉に、わあ、と皆が盛り上がった。
───
十二歳の
「では……、
と澄まして言った。
一方、十歳の
「では……、ええと……、
と顔を赤くしながら、小さい声で言った。
あまりに微笑ましいので、皆、
「では、お二人とも、髪の毛を一本、頂戴いたします……。」
卜部は慣れた手付きで、二つの
卜部は先に、広河の髪が巻き付いた亀甲を選び、呟き、右手をゆらゆら振り、亀甲を
───
卜部は広河の亀甲を火から取り出した後、先程より
───
「
感情のない
意弥奈の肩に手をそえた広河は、
ざわざわざわ! と大きなどよめきが隅々まで広がり、人々は、
「なんてことだ……。」
「あまりに不吉な……。」
と
「バカな!!」
広河が大声をあげるが、渋い顔をした広瀬に目で制止される。
もう弟の……大川の亀甲を焼き始めている。
ざわめきは静まり、皆、
───
きりきり
卜部は大川の亀甲の
「
と言った。
ひぃ、と聴衆から悲鳴があがる。その場は凍りついたように静まり、
───
くはや ここなりや……
広瀬が苦り切った顔で、
「なんとかその
と卜部に告げたが、
「用意してきた亀甲はこれしかないのです……。」
と
パン、と
広河が、
「
広河は大声で
人垣がさーっと割れ、誰も引き止めようとしない。
大川は、兄が去った方向と、父を代わる代わる見ながら、ひたすら困惑した顔をしていた。
───何しかも
「
短い時間でぶつぶつ何事かを唱え、さっと右手を焚き火の上に払った。すると。
パァーン!
と
火の粉が舞い、口を閉ざしていた聴衆が、自然には有り得ぬ炎の爆発に、
「おおっ!」
と口を開きどよめいた。
───
気がつくと、卜部の姿は跡形もなく消え、火は元通りの高さで通常通り燃え、
* * *
父上はその場で、
しかし、あれだけの聴衆の前の
人の口に戸は立てられない……。
あの
たしかにその翌年、
しかしその二年後、
もちろん、他の鉄など、あらゆる物も、高騰する。
食えぬ。払えぬ。
世が乱れ、
そして
───大川、十五歳。
───第一章、完───
* * *
※参考……古代歌謡集 日本古典文学大系 岩波書店
※著者より。
次回、登場人物一覧は、おまけがあるので、ぜひ覗いていってね!
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