第八話 蛾眉の女官
「可愛らしいじゃないの。」
と笑う。だが、くちなわ(蛇)が雛を狙う。
「………せっ!」
私が勢いよく放った
「まあ、すごいわ、
母刀自が嬉しそうに加巴理を褒めちぎる。
三虎が進み出て、加巴理の
二人の
「最近、
「ええ、そうでしょうとも。さあ、鉾を持ったその姿、ようく見せてちょうだい。凛々しいこと。あたくしの
「えへへ……。」
ギャーギャー、雛は元気にさえずる。
加巴理は、母刀自がたくさん褒めてくれるのが嬉しくて、笑いながら、鉾を持ち、胸を張る。
「本当に、ご立派ですわ。」
母刀自の後ろに控えた
いつも顔に厳しさが漂っているが、笑顔はとても美しい。
そうしていると、三人の女官が一人の武人を伴って
すっと、その場の空気が冷えた。
この屋敷を守る
それは、父上の
先頭に立った
「
今すぐ、お部屋にお戻りを。」
「ええ……。お聞きしましょう。」
母刀自は穏やかに頷く。
加巴理は母刀自に促され、部屋に戻りながら、思う。
(なぜこの女官は、こんなに傲慢に母刀自に接するんだろう。
たしかに郷の
しかし、この女官が、何だというのだろう。
いやしくも、
母刀自は、
それを良いことに、
父上は、知っているのか。
母刀自の
何の力にもなろうとしない、父上の無関心が恨めしい───。
それとも、私が、愛される息子ではないのがいけないのか。)
「何かした?」
と小声で訊いてみた。
「いえ。何も。」
三虎はふるふると首をふる。嘘をつく
母刀自の部屋は広い。
三虎と加巴理は、
部屋の中央では、八人の大人がいる。
隣に立つ
「
まこと
(あっ!!
───
加巴理が父上に、褒美にと所望したものだった。
今朝、父上の女官から、この部屋に届けられたばかりである。
どこから聞きつけてきたのか。
ざわ、と母刀自たちが小さく動揺し、
「あとでゆっくり、どんな衣を仕立てるか、一緒に考えましょうね。」
と言った母刀自と、身体に布をあてて考えるのを楽しみにしていたのだ───。
「これね。」
見てわかったのだろう、にやりと笑った
「見せろと言われましても──。」
鎌売は硬い口調で言い、
「素直にお渡し!」
蛾眉の女官は、白い
鎌売が悔しそうに、くぅ、と声をもらす。
そんな鎌売を満足げに見た蛾眉の女官は、
「
これは
と勝ち誇ったように言った。
(私が兄上より先に、
だから、
加巴理の全身が怒りでかあっと熱くなった。
ぎりぎりと鎌売が女官を
母刀自は呆然と立ち尽くし、月光のように美しい顔は青ざめ、ぽつりと、
「それは、加巴理が、加巴理が───、返して。」
と小声で
見開いた目から、涙がぽとり、と
それを見た鎌売が、ひゅうっ、と息を吸い、肩を怒らせ、ぎっ、と
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