第六話 ひまることは。
三虎の父である
三虎は頭をさすりつつ、私を迎えてくれた。
三虎と並んで
豆菓子を口に一つ、ぽいっと入れると、ぶわっと、
豆菓子を噛めば、コリッ、コリッという硬くて楽しい歯ざわりと、豆の
「ふふっ。」
(やっぱり、豆菓子は美味しいなぁ。)
ふと隣を見ると、三虎の豆菓子を
三虎だって、豆菓子は好きだ。
高価なものだからって、この
「ほらっ! お食べっ!」
豆菓子を三つ摘んで、えいやっ、と勢い良く口に入れてやる。口を私の手で押さえられた三虎は、
「ほが! ほが!」
と言いながら、口をもぐもぐさせた。
私はニンマリしながら、
「美味しいねぇ。」
と言ってやると、
「……はい、美味しいです。」
と観念したように三虎は自分から次の豆菓子に手を伸ばした。
「ところでさ、私、馬の初乗りができたから、馬をもらえる。どんな名前にしようかなぁ。」
そう足をブラブラさせながら三虎に言うと、
「
と三虎が、えっへっへ、とイタズラするような顔で言う。
「
げんなりした顔で注意すると、三虎がバーンと
「良いだろぉ! 一回聞いたら忘れられないだろぉ!
誰かこのバカをどうにかしてくれ。
「却下。」
冷たく重ねて言うと、
「ちっくしょお───!」
と三虎が吠えた。顔は
「態度がふてぶてしい。」
素直に言ってやると、三虎が、
「ぐぬぬ。」
と
「
と大声で天井を見たまま言った。
こちらが聞き入れないと、ずっとここから動かないに違いあるまい。
この
「あー、はいはい、分かったよ。ちょっと考えさせろ。」
三虎とは赤ちゃんの頃からのつきあいだ。三虎のこれくらい、
「……そうだなぁ、三虎、
そう訊くと、三虎が静かになり、むくっと上半身を起き上がらせた。
私を見て首を振る。
「……知らない。」
私は、庭に立ち
「
無理もない。
私も、
「母刀自に教えてもらった。
今は滅んだ国の……。
私には、母刀自が教えてくれた、ということが大事だ。母刀自が、いる、というなら、いるのだろう。
「では三虎、おまえの馬には、私が名前を与えてやろう。
三虎は、
「かひや、かひや……。カヒャ、カヒャ……。カヒャになっちゃいます!」
と真剣に言うので、
「じゃあ、カーヒーヤ、でどうだ?」
と告げると、三虎は満足そうにちょっと笑って頷いた。
「じゃあ、
「また随分可愛い名前だな。」
三虎の気配が澄んだ。
「
三虎が、黒く輝く瞳で、じっと私を見る。
(わかっているとも。)
私は、柔らかく頬が緩み、笑う。
三虎が、何を言いたいか、私はわかっている。
身を尽くし、私に仕えきる。三虎は、そう、忠誠を私に捧げている。
(私のたった一人の
少し照れた。
私は笑いつつ、下を少しむき、腕組みしたまま、考えるフリをする。
「良ぉし、じゃあ、格好良くしてやろう。博士に、
ミヲヴァータにしよう。さあ、漢字を考えるぞ。勇壮なやつ!」
そう元気に告げると、三虎が、
「はいっ!」
と嬉しそうに笑った。
頑固者が笑った。
私はなにかくすぐったく───。
豆菓子をがっさと鷲掴みにし、
「お食べっ!」
と左手で三虎の首根っこを
「ほんがぁぁ!」
と三虎は目を白黒させ足をジタバタさせた。
目を細めてこちらを見ていた
私は、
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