第9話弥生➁
言い忘れていたが、ちょこスタには他のソシャゲにはない機能がある。
それは……
カードを交換できるということだ。
他のソシャゲにはない機能をということで実装されたこのシステム。
当初は、ガチャを回さなくても誰かと交換すれば欲しいカードが手に入るという斬新さからユーザー数は一気に伸びたが、同時に一つ問題も発生した。
乞食の存在。
ちょこスタの交換機能には同じレア度でなければ交換できないという制限がない。
ゆえにレア度の低いカードと高いカードを交換したいという乞食が大量に発生し、ちょこスタの民度を下げている。
弥生『嫌です。 どうして私がこんなことしなきゃいけないんですか』
ワニ『仕方ないよ^^すずかのため^^早くちょこスタのプロフィール欄書き換えて^^』
「ううう……」
そう言われたら断ることはできない。私はワニちゃんにそそのかされるがまま嫌々とちょこスタのプロフィール欄を書き換える。
【カードがダブってきたのでTwitterの相互フォロワーにだけカードの交換応じます。低レアとスーパーレアの交換も可。Twitter→@yayoi】
あとはこれを投稿するだけだが、どうしてもその勇気が出ない。
……泣きたい。嫌すぎる。だってこんなこと書いたらすぐに乞食が湧いてくるじゃないか。
確かに10年以上ちょこスタをしてきてカードは多少余っているけど、決して乞食にくれてやるものじゃない。
「うううううう……」
大体こんなプロフィール文に書き換えたところで計画通り姫てゃ!がフォローしてくるとは限らないだろ? それよりも他の有象無象たちがまるでハエみたいにたかってくるに違いない。
「ううううううううううううう……」
ワニ『早くしなね^^』
「くうううううううううう……」
人の気も知らずにあいつはっ! でも、全てはすずかの為だ。仕方ない。私は投稿ボタンを押すと、すぐに姫てゃ!のちょこスタアカウントにフォロー申請を送った。
ワニ『あとは姫てゃ!からTwitterのフォローくるのを待つだけだね^^』
ワニちゃんの作戦では、このあとフォローに気づいた姫てゃ!が私のプロフィールを見て、姫てゃ!は多分……というか確実に乞食だからすぐに私をフォローしてくるといったものなのだが……
「そんなにうまくいくものでしょうかねぇ〜」
なんて呟きながら、私はTwitterを立ち上げる。
内容は、昨日のガチャの結果だ。
『今回のガチャ神引きすぎんか!?!? また坊ちゃんだよ!! 姫美也くん星5、必ず育成してデッキに組んで見せます』
「それにしても昨日のこれは神引きだったな〜」
私はTwitterのスクショを見ながら呟いた。
最高ランク星5の姫美也くんのカード。
2万くらい課金してようやく手に入れたんだよなぁ〜。
なんてTwitterを眺めていると、Twitterの通知音が鳴った。
—姫てゃ!がフォローしました—
ーー姫てゃ!からメッセージが来ました−−
『初めまして〜姫てゃ!ともぉします! プロフィール見てきましたぁ! フォローしたんで早くフォロバしてくださいね』
「うおおおお! きた! きた!」
こんなに早くくるなんて思っていなかった。思わず飛び上がってガッツポーズをしてしまう。
が、その後の姫てゃ!のメッセージを見て膝から崩れ落ちてしまった。
『過去のツイート見ましたぁ! 昨日星5の姫美也くん当てましたよね? それと私の星1のキャラ交換してくださぁい!』
こいつ……救えねえ。
ワニちゃんにそのことを報告すると、すぐに返事が来た。
ワニ『やったじゃん^^俺の計画通り^^これでTwitter繋がれるじゃん^^早く交換しな^^』
「こいつ……」
人の気も知らずに……けど、まあいい。星5を手放すのはかなりショックだけど、これでこの女のTwitterと繋がれる。
私はすぐに姫てゃ!をフォローする。すぐに承認されたのでメッセージを返した。
弥生『かしこまりました。カード交換はフォロワー限定としております。今後もよろしくお願い致します。では、ちょこスタのフレンドIDこちらです』
すぐにちょこスタを開くと、姫てゃ!から交換の申請が来ていた。
もちろんそのカードは星1の雑魚カード。
ムカつくことにメッセージには『私の一番大切なカードです! ぜひ可愛がってくださぁい!』少しでも価値を上げようとした痕跡が残っている。
無理無理。だって私そのカード100枚以上持ってるもん。可愛がれない。
ため息をつきながら交換を承諾した。
「はぁ〜あ、私の姫美也くんが……」
放心すること10秒。まあいい。これであの女のTwitterが手に入ったんだと、気を取り直して彼女のTwitterを見ることにしたが……
「はあ!? あの女! ブロックしやがった!」
ワニちゃんからメッセージが来た。
ワニ『どう?』
弥生『どうもこうもない! あの女カード交換が終わったらすぐに私をブロックしやがった! ツイート一つも見れなかった! お前の作戦穴だらけじゃねえか!』
ブチギレメッセージを送る私。……ダメだむかつきすぎる、ガチャを回そう。
「お、いいじゃん!」
嫌なことがあった時というのはいいカードが当たるものだ。
なんと星5のカードが当たってしまった。
どのデッキに組もうかな〜、とウキウキで妄想しながらTwitterにスクショを貼る。
『嫌なことあったからガチャ引きまくった! そしたら見てぇ〜! 星5坊っちゃん!!! ぼ、ぼ、ぼ、ぼっちゃん;;嬉しすぎるよ今日も私頑張れるよ;;』
そんなとき。
−−姫てゃ!がフォローしましたーー
「は?」
間髪入れずに姫てゃ! からDMが来る。
姫てゃ!『またいいカード当たったんだねぇ〜姫、そのカード欲しかったから、いいな〜って思ってDMしちゃった!』
いやいや、お前、どの口が。ブロックしやがった癖に都合のいいときばっかり連絡してきやがって。
……。
結局また交換した。
今度こそ、流石にブロックされないと思って。
もちろん姫からはまた雑魚カード。
もちろん結果は一緒だった。
「……コイツどこまで乞食なんだよ、親のツラ見せろよ」
悪態をつきながらワニちゃんに報告する。姫てゃ!はカードが欲しいときにしかフォローしてくれない。これじゃあ鍵垢を覗く時間が短すぎる。
自分の一番の趣味はちょこスタで、カードも大事にしてきた。ショックが大きい。心が折れそうだ。ワニちゃんにもう無理だとメッセージを送る。
ワニ『やれ』
弥生『鬱になりそうです。もうやめます』
も〜むり! や〜めた!
私は私の楽しいことに時間を使いたい!
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