第9話
「もう帰んのかよ。明日師匠に乗せてもらう約束しようと思ったのに」
夕暮れ前のヌエボ広場。大聖堂前のこの街で最も広い場所は、夕焼けに彩られて絵画の世界に入ったような景色になる。その幻想的な空間で、アキラは両親の間に立ってどこかさみしげな表情をしていた。
「いいんです。次は、あなたのに乗りたいから」
「ヒュウ」
葵が両手を頭に組んで口笛を吹いた。うざい。そう思いながら俺は葵を軽く睨んだ。照れがだれにもバレないようにごまかすために。
「だから、早く一人前になってくださいね」
耳に痛かった。心にも軽くグサッときた。
「……おう」
「素直でよろしい」
言った葵をひじで小突いた。イテッとつぶやく葵としかめっ面の俺を見て、アキラと両親は楽しげに笑った。
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