福永ユキミ

 オレ、山田ケイスケは、どこにでもいる高校二年生。

 見た目は普通。

 友達はそこそこ。


 でも、クラスにいる時は、スマホを弄って、自分のチャンネルと睨めっこ。


「昨日さ。ランの配信ヤバかったぁ」

「ね。顔面天才過ぎ」


 クラスでは、オレ以外の配信で大盛り上がりしている女子達が、黄色い声を上げて談笑していた。


 こうやって、他の配信者の事を耳にすると、無性に疎外感を味わってしまう。


 というのも、オレは何をやっても中途半端で、何をやっても上手くいった試しがない。


「ユキは見たぁ?」


 気になる子の名前が出てきたので、目線だけそっちに向ける。


「見てねー。興味ねー」


 ヘラヘラと笑う女子。

 福永ふくながユキミ。


 オレとは住む世界の違う、学年一の美少女。

 先輩、同級生、後輩から告白されては、全て心ない一言でぶった切り。

 それでも人気があるのは、屈託ない笑顔を常にしていて、誰にでも明るく接するからだろう。


 サイドテールの髪に、スレンダー体型。

 肌は真っ白で、笑みを浮かべると、空間に花が咲いていた。


「?」


 福永がこっちを向き、オレは慌てて視線を逸らす。


「どったの?」

「いんやぁ、視線を感じまして」


 ラノベだったら都合の良い女子なので、知らないふりをしてくれる。

 オレだって、本当に存在してくれるなら、そっちの方がいい。


 でも、どれだけ可愛くったって、所詮は現実。


 福永が思いっきりオレの方を指しているのが、視界の端に映っていた。


「キモ」

「あはは。ね~? キモいよねぇ」


 世界が滅ぶことを願った。

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