学年一の美少女が一番ヤバいやつ

烏目 ヒツキ

好きな人いる?

配信

 六畳半の自室で、パソコンに向かってひたすら喋るだけ。


「でさぁ。ウチの学校のセンコー、マジでイラつくって言うか」


 こんなものに、意味なんてない。

 ただの暇潰し。

 くだらないことは、やっているオレが一番理解している。


 コメント欄は何も書かれておらず、登録者は1人。


 そりゃ、たくさん視聴者が増えてくれたら、金が入ったりとか、オレの不純な動機を色々叶えてくれるんだろう。

 だけど、現実は甘くない。


 毎日配信したって、数字が1から変わる事はなかった。


「あー、イラつく。……くそ」


 他の奴らはやりたいことを見つけて、ひたむきに頑張ってる。

 オレは未だにやりたい事なんて見つかっていない。


 楽して生きて、楽して金儲けして、適当に死ねればいいかな、って漠然とした考えが頭にあるだけ。


 毎日が退屈だった。


 この日も、適当に配信という八つ当たりを終えて、さっさと眠りに就くはずだった。


 ところが、今まで空欄表示から、変わる事のなかったコメント欄に文字が浮かぶ。


『好きな人いますか?』


 なんだ、こいつ。

 女かな。


 なんて事を考えたオレは、適当に答える。


「いるいる」

『誰?』


 今まで、何もコメントしてこなかった奴が、いきなり饒舌じょうぜつに話してくるのだ。驚きより、少し怖くなった。


 自分で言うのも難だが、オレはチキンだ。


 歯向かわない奴を一方的に攻撃する事は楽しい。

 でも、自分が攻撃されたら、死にたくなる。


 相手の考えが読めず、間を空けて、適当に答えた。


「ヤラせてくれる女なら、誰でもいいわ」

『何をヤラせるの?』

「決まってるでしょ。セックス。それ以外ないわ」


 あーあ、と心の中で言葉が漏れる。

 こんな事を言ったら、誰だって引く。


 だけど、ムシャクシャしていたオレは、もう止まらなかった。


 そこへまたコメントが書かれる。


『誰が好きなの?』


 また、この質問だ。

 どうせ、答えたって、相手はおっさんかもしれないし、遠く離れた場所に住むババアかもしれない。


 そう考えると、「別に言ってもいいか」という気になった。


「福永ユキミ。はっ。知らないでしょ?」


 知るわけない。


「なんか、だりぃから。今日は終わるわ」


 と、オレは配信終了のボタンをクリックした。

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