第9話
「くぅ………」
人の姿を保てずに子狐となりフラフラと彷徨い、私は気を失ったはず………
ここは何処だろう……
「あ、おきたみたい!お水とふやかしたドックフード食べる?」
私はいま、タオルを敷き詰めたケージの中で丸くなっていた。声を出そうにも掠れて声が出ないから水だけ飲ん…………水にドッグフードが浮いてる……流石にやだな……えぇい、背に腹は代えられない。
クッ……と涙をこらえつつふやけたドッグフードを食べる。贅沢は言えない……助かっただけ感謝しなければ。そして地べたを這いドロ水を啜ってでもあのコスリと言う男とタヌキ、そして女たらしの処女厨のクソ元上司をシバいてやる……
「ねぇ!コスリ君も見てみなよ?かわいい子拾ったの。見つけた時は丸焼きになって死にかけてたんだけど、回復ポーションぶちまけて息を吹き返したんだよ!」
「キツネかぁ、昨日の今日で縁があるなぁ」
「ホンマやな大将、せやかてキツネはタヌキのライバル、甘やかさずにビシバシ行くで!鍛えて式神にでもしたらえっ“ボッ”…………」
私が落ちぶれた原因!おのれ!コイツらを丸焼きにしてや゛る゛!!!!!
「うわっ、この子めちゃくちゃ暴れ出した。トラクゥお前が怖いんじゃねぇのか?ちょっと向こう行ってろよ」
「いやいやいや!今コイツワイの目の前に小さいけど火種出しおったよ!正体を表せ言うほうが先やないんか!」
ガチャガチャとケージ内で暴れ回り、留め具を破壊して脱走しようとしたアタシを最初からいた黒髪眼鏡の女が抱き上げる。うわっ力つよっグググググ…………抜け出せない
「やっと大人しくなったね。ひょっとしてこの2人に何か見覚えがあるの?昨日2人が襲われたって言ってたキツネってひょっとしてあなた?任務失敗で追い出されたって所だったりする?」
一つ一つ私に問いかけながらギリギリと腕を締め付ける女………骨が………軋む………内蔵が………なんで私……こんな……
「手を離して欲しかったら、暴れないって約束出来る?出来るなら今から聞く質問に“ハイ”って答えるの。分かった?」
目の奥が………チカチカする………いき………できな……
「我の問い掛けに応えよ、化性の者よ。我の式としてここに契約の契を交わさん」
………は………だめ………い…………やだ………けど……
この………ま……まは………もっ…………といや………
だ………から……………………………………
…………………………………“はい”…………
スゥッと視界が明るくなる。この怪力女と霊力のパスが繋がった感覚……いまなら
私は地面に降ろしてもらうと、ヨタヨタとケージに敷かれていたバスタオルに包まってから人に化ける
「……昨日はいきなり……すみませんでした。失敗した奴は要らないと追い出されたのでここに置いて下さい……」
「はい、分かりました。今日からよろしくね。私は麦野フミ。貴方は?」
「シホといいます……」
「あー、知ってるだろうけど一応な越里だよろしく」
「化け狸のトラクゥや!ここではワイの下に付いてもらうで!」
(人に化けられない未熟者のクセに)ボソッ
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