第8話 やり過ぎた反動
殺す
星元に与えられた管狐の一人であるシホは激しい怒りと深い羞恥、そしてより確実な殺意で頭の中が一杯になっていた
ーーー
「と、言う訳でございます。不覚を取った事、一片の申し開きも無く………願わくば、私にもう一度チャンスを下さい!」
私はダンジョンで起きた事を正直に話した。
あの騒動は神々、おそらくはスサノヲによる嫌がらせと当てつけであった事。加護を受けた男はせいぜい2〜3割程強くなっているが、劇的な強化はされて居ない事、そして手土産にしようとした所反撃に合い、服を剥かれた事を報告する。
私にも女の形をした妖怪。そういう事を使う事もあるので覚悟はしていた。だが、あの男とタヌキは色香に当てられたと言うよりも私に反撃の手の可能性を恐れて裸にして、あまつさえ気まずそうに上着を掛けて消えたのだ!
暗部としてのプライドも女としてのプライドもズタズタにされた。
あれが真に殺し合いであるならば、私は既に居なく、女の部分に絆されたのであるならば、褥で首を掻く所だった。だが、アイツらの「とりあえず攻撃して、うまく行ったからハイさよなら」は私達みたいな事をしている人間をバカにしている。
どうせやるなら殺すか犯すかしてくれれば吹っ切れたものを、「やっべーどうしよ、とりあえず武装解除して、俺しーらね」なんてのは、あまりにもだ。
「シホ、君はもういいよ。もともと家の人に付けられた何匹も居る内の一匹だ。それに、君が僕の側に居るとくだんのアイツらに付け入らせる点になる。」
星元様の声は聞いたことが無いくらいに平坦で、心の底からどうでも良さそうだった。あ、コレ私クビ切られる?!そんな、あんなアホみたいな奴に………
「君の報告は多少参考にさせてもらうよ。でも、もうキミは僕の式神じゃない。何処へなりとも行くんだな」
「し………しかギャッッッ!」
あついあついあついあつい!私は反射的に床に身体を擦り付ける!ぜんぜん消えない!これは星元様の狐火?!
「もういいって言ったのが聞こえ無かった?汚れた弱いメスになんて興味も価値も無いんだよ」
あのクソガキ!ボンボンだからってこんな仕打ちを!ご主人様とて許せぬ!
私は咄嗟に星元に飛び掛かる!しかし、隣に居た別の女狐によって吹き飛ばされる。
「あらあら、シホちゃんは惨めねぇ……でも星元様のイメージを守る為よ。貴女みたいなのはもうここに居ちゃいけないの」
さらに四方八方から無数の女狐が狐火を飛ばして来て、一気に夜の屋敷が真昼の様になった
「どうしますか?」
「捨て置け。」
ーーーー
〜越里とトラクゥと戦ったダンジョン近くの茂み
毛皮が焼け落ちて地肌までが大火傷した小狐が蹲っていた
ハァ……ハァ……ハァ………なんでよ……どうしてこんな事に………星元のヤロウ………それに侍り付くアバズレめ…………アタシを焼きやがって……
「もー刺客に襲われたとか早く言ってよ越里くんもさー。たぶんもう目を覚ましてるだろうけど、万が一現場に何か残ってるとヤだからねぇ。えっ?!マサくんマサくん!こっちこっち!」
うるさい女の声を聞きながら私は意識を手放した
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