第2話 あざと可愛い転校生
翌朝、私は2-Bの教室でポカンと口を開けて固まっていた。
「初めまして、古賀怜王です。よろしく!」
教室の前に立って元気な天使の笑顔で挨拶したのは昨日の変な男の子、古賀くんだった。
朝から教室に机が一つ増えていて、転入生じゃないかってみんな話してたけれど……。
まさか古賀くんだったなんて。
あ、でもだから昨日「またな」って言ったのかな?
私の黄土色のブレザーを見て自分の転校先の制服だって思ったのかも。
古賀くんは私と目が合うと、フッと小さく得意げに笑ってから声を上げた。
「あ! ヒメ! やった、同じクラスだったんだな!」
無邪気にも見える笑顔で片腕を上げる古賀くん。
直前の得意げな顔を見ていなかったら素直にドキッとしたかも。
いや、どっちにしろドキッてなっちゃったんだけどね。
「あら? 緋芽さんとお知り合い?」
「はい、昨日ちょっと助けてもらって」
「じゃあ丁度良かったわね。席は彼女の隣だから、色々教えてもらって。緋芽さん、お願いしていいかしら?」
先生に頼まれて断れるわけない。
それに、昨日ケガが治ったこととか古賀くんに聞いてみたかったからある意味丁度良かったのかも。
「はい、分かりました」
そうして請け負たものの、転校生は珍しいから教室にいると古賀くんはすぐにみんなに囲まれてしまう。
可愛い顔立ちをしてるし、性格も明るそうだから話しかけやすいもんね。
そんな古賀くん。
でも授業が始まったら……。
ね、寝てる⁉
一時間目の数学の授業で早くも机に突っ伏して寝ている古賀くんにみんな密かに驚いてるのが分かる。
先生も困り果てているみたいだったけれど、このままにはしておけないって思ったのかな?
「古賀、古賀! 起きろ!」
「ん? はい……」
呼ばれて起きた古賀くんはまだウトウト。
先生はとりあえず目を覚まさせようと思ったのかな?
「この問題解いてみろ」
と、ちょっと難しそうな問題を黒板に書き出して古賀くんを前に呼んだ。
「あー……はい」
黒板の前で「できません」って言うんだろうなってみんな想像したと思う。
でも古賀くんは止まることなくチョークでカッカッと問題を解いていった。
「古賀……お前」
ちょっと驚いたみたいな先生が「正解だ」と言うと、教室中がちょっと騒めいた。
「うわー、なにこれ。ちょっとカッコイイんじゃない?」
「こんなマンガみたいなことホントにできるやついるんだ?」
そんな声の中先生はため息をつく。
「予習してたのか? 勉強が出来るのは良いが、寝るのは授業態度が良くないぞ?」
「すみません、俺朝は弱くて……。体育とか体動かすのなら大丈夫なんですけど、じっと座ってなきゃいけない授業だと眠気が……」
一時間目だけでも大目に見てもらえませんか?って、うつむいた顔からの上目遣い。
あ、これ狙ってやってる。
何度か見たからか、すぐに分かった。
自分の可愛い顔立ちを理解しているのか、古賀くんはわざと可愛く見えるように振る舞ってるときがある。
多分こういうのをあざといって言うんだろうな。
「うっ……仕方ないな。一時間目だけだぞ? それに授業についていけなくなったら補修もさせるからな?」
古賀くんの可愛さに負けたのか、先生はそう言って許した。
この一件でさらに有名になった古賀くんは、休憩時間には他のクラスの子にも囲まれていた。
「すごいね! 黒板にすらすらーって答え書いたときなんかカッコ良かったよ!」
「そう? あんがと」
座っている古賀くんは話しかけて来た女子を見上げて天使の笑顔。
はい、女子は完全ノックアウトだ。
本当にあざとい。
ちょっと呆れながらその様子を見ていた私は、ふとこっちを見た古賀くんと目が合った。
「っ⁉」
私と目が合った瞬間に二ッと笑った顔はちょっと意地悪なもの。
天使の笑顔じゃないのに、その顔を私だけに見せている感じがしてドキッとしちゃった。
古賀くんはすぐにあざとい笑顔に戻って「そうだ、ヒメ」と声を掛けてくる。
「放課後時間あるなら学校案内してくれない?」
「え? まあ、いいけど」
調理をした翌日はいつも部活は休みだ。
明日からまた次に作るものを決めたりと活動が始まるけど、今日の放課後はまるまる予定はない。
だから断ることなくうなずいた。
昨日のことも聞けるかもしれないしね。
「あんがと」
「っ!」
ニッコリ可愛く微笑まれて、あざといと思いつつキュンとしてしまった。
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