第6話 愛想が尽きた、絶縁上等よ!
この人達に何を言っても、どうせ聞いてもらえない。
「とにかく、お前がしたとされる虐め行為は、すべて侍女がやったことにする」
「私はエリザを虐めてなどいません。むしろ責められるべきは、私ではなく彼女の方です」
「真偽は関係ない。虐めを疑われるような行為をしたこと自体が問題なんだ。いいか、ビクトリア。『侍女が勝手にやった』と言い張るんだぞ」
前世で言うところの『秘書が勝手にやりました』と言い逃れする作戦ね。
私は抗議の眼差しを父に向けた。
「嫌です。やってもいない罪を、しかも他人に押しつけるようなやり方、同意できません」
「お前の意見など聞いていない。子供は親の言うとおりにすれば良いんだ」
「お父様――」
「黙りなさい! それに、侍女なんて替わりはいくらでも居るだろう。お前も侯爵令嬢ならば、使用人を使い捨てるくらいの賢さを持ちなさい」
信じられない……。
父のあまりにも最低な言葉に、私は耳を疑った。
使用人たちがいるこの空間で、よくもまぁ『替わりはいくらでも居る』だの『使い捨てる』だの平然と言えたものだ。
「使用人を切り捨てるような、そんなずる賢さ、私は要りません」
拳を握りしめ告げた言葉は、やはり両親には届かなかった。
「私たちに見放されたくなければ、我々の言うとおりにするんだな。ビクトリア」
そう言って、両親は私の意見などまるで無視して去って行った。
部屋に、私とレイラだけが取り残される。
「お嬢様、あまり旦那様に逆らわない方が良いと思います。エリザ様への虐めは、私がやったことにしましょう。お嬢様のお役に立てるのなら本望です」
そう言って、レイラは気丈にほほ笑む。
この先も貴族として生きるのなら、父の言うとおり、他者を切り捨てる覚悟も必要なのだろう。
だが、そんな冷酷な決断をしなければ生き残れない世界なら、貴族社会は私には向いていない。しがみつきたい理由も、未練もない。
私は首を大きく横に振った。
「ありがたい提案だけど、それは駄目。レイラに責任を押しつけるようなこと、したくないわ」
「ですが、旦那様の言いつけを破ったら、ただでは済みませんよ」
「望むところよ。私、
私は勢いよくベッドから飛び出し「さぁ、やるぞ!」と腕まくりした。
レイラが口をあんぐり開けた驚きの表情で、こちらを見つめる。
「えっと……お嬢様、なんか性格変わりました?」
「かもね」と、私は例の悪女スマイル全開で笑った。
もう親の言いなりになったりしない。
自分自身を押さえつけて、心を殺して生きるような真似はしたくない。
私は両開きの窓を一気に開け放った。
どこまでも果てしなく広がる青空。自由気ままに漂う白い雲。
広大な空を、鳥が力強く羽ばたき飛んで行く。
「私、覚悟を決めたわ」
今度こそ、悔いのない人生を送って幸せになるんだ――!
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