第7話

 いい加減、聞き苦しい言い争いにうんざりして、私は起き上がった。


 テオドラたちは顔を青ざめさせ、尻もちをついて私を仰ぐ。


「残念だわ。こんな結末で」


「あ、あ、あ……」


 テオドラは過呼吸になったみたいに私を指さしたまま、口をパクパクとさせる。


「アンネ」


「はい、オリヴィエ様」


 扉が開かれると、アンネと一緒に衛兵たちが立っていた。


 衛兵たちが腰の抜けた少女を起き上がらせると同時に、マグマンも両脇を衛兵に掴まれる。


 マグマンは表情を引き攣らせた。


「お、オリヴィエ様! これはどういうことですか!? 私はちゃんと仕事は果たしたのに!?」


「そうね。協力助かったわ。でも、そもそもあなたが医師としての責務を全うしていれば、こんな手間のかかる芝居を打たずに済んだのよ」


「!? ヤブ医者! あなた、裏切ったの……!?」


「――テオドラ様」


 私が声をかければ、テオドラは鬼気迫る形相で睨みつけてくる。


 しかしそれを私は静かに受け流す。


「金で転ぶ人間は、いとも簡単に裏切るわ」


 衛兵に連行されるテオドラたちの声が長く尾を曳きながら遠ざかっていく。


「オリヴィエ様」


「ご苦労様、アンネ」


 アンネは安堵したのか、その場に足下からくずれそうになるのを、私はやんわりと抱き留めた。


「大丈夫?」


「も、申し訳ございません……!」


 顔を赤くしたアンネは私の腕の中から脱すると、ぺこぺこと頭を下げた。


「アンネ、あなた可愛いわね」


「ふぇ!?」


【でしょ? ふふ。アンネは可愛いの】


「なんであんたが祠らしげなのよ」


「あ、あのぉ……?」


「ああ、こっちのことよ。アンネ、よくやってくれたわ。休んでて」


「あ、はい。では失礼いたします」


 アンネは折り目正しく深々と頭を下げると、部屋を出ていく。


 私は伸びをしながら、仰向けにベッドに横になる。


「これで無事解決ね」


【そうね……】


「オリヴィエ、あんた、なかなかいい性格してるわ。仲間割れさせるなんてね。えげつないやり方だけど、好きよ」


【あ、あれは、ああでもしなきゃ自白してくれないと思ったからで……っ】


 オリヴィエの慌て様がおかしくって、私は吹き出す。


「そこまで慌てなくてもいいから」


【……もう。ユリア、あなたは意地悪ね】

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