片思い歴10年 幼馴染の恋

逃げる春乃

「春乃、おはよ」

蓮は学校の廊下で春乃を見かけて、後ろから声をかける。

「！」

驚いた春乃は下手くそな気づかないふりをして、走って行ってしまった。

別の場所で会っても、目が合っても、全部逃げて行ってしまう。

それが何日間も続いた。

「春乃に何か言われた？」

蓮は学校の廊下で小学校からの友達の佐和に話かけられた。

「え…？」

「え、じゃなくて」

「え！？」

蓮はびっくりして言う。

「小学校の友達はほとんど分かってるよ」

佐和は、はっきりとは言わなかったが、言わんとしてる事は分かった。

「何で…？」

「知らないの蓮だけだから」

「うそ…」

自分がそんなに鈍感だとは思わなかった。

どっちかといえば、気付く方だと思っていた。

「あのさ、何か言われたっていうか…」

（聞き出したっていうか、気付いたというか…）

「言っとくけど、春乃の恋愛スキル0だからね。もしかしたらマイナスの可能性もあるから」

「…うーん、そうだね…」

「…それは気がついてたんだ」

「どうしよ、すごい逃げていくんだよ」

「知ってる」

春乃は蓮と会うのは恥ずかしくてたまらなかった。

（無理ー…）

「春乃ー、一緒に帰ろう」

佐和が話かけて来た。

「あっ、うん…」

少し慌てて言う。

「蓮、話したがってたよ？」

「やだ」

「アハハ。はっきり言うね」

「もう会いたくない…。恥ずかしい」

春乃は佐和には、素直に話せる。

背中を押してくれるけど、絶対無理に押さないから。

「友達もやめちゃうの？」

「嫌だけど、しょうがない…」

「バカだね」

佐和は微笑みながら言った。

「蓮は寂しいんじゃない？」

春乃は首を振った。

「きっと困ってる」

「春乃に逃げられて困ってるよ」

佐和は優しく言った。

蓮は、何でも春乃に話をしてきた。

くだらない話でも、二人で笑ってた。

なので、春乃と話せない事が、ストレスになってきた。

春乃が家に帰ると、家の前に蓮がいた。

気づいた春乃は背中を向けて逃げようとした。

「待って」

蓮は、一瞬で追いついて春乃の手をとった。

春乃の顔が真っ赤になった。

「あのね、さっき家帰ったら、とバカップル（姉と義理の兄）がイチャついてて。最悪だった」

「？」

「あとね、数学のテストが80点で一番とれなくてヤバかった」

「？」

「春乃と喋れないのは辛いんだけど」

「…」

「なんか喋って」

「…」

「俺と喋るの嫌…か…」

「…」

蓮は手を離して帰ろうとした。

「あのね」

春乃の声が聞こえて蓮は振り返った。

「私も数学ヤバかった。65点。過去最低…」

「ヤバいね」

蓮は少し笑った。

春乃も少し笑った。

「…」

「じゃ、明日ね」

蓮は、少しだけホッとして帰ろうとした。

「あのね、」

春乃が話かけた。

蓮は振り返る。

「この前の…？忘れてほしい…」

「…」

今度は、蓮が黙った。

「前みたいになりたい」

「…うん」

蓮の返事を聞いて、春乃はホッとした。

「それで…春乃が近くにいてくれるなら、それでいい」

「？」

春乃はよく分からなかった。

分かって無いなと思った蓮は、言い換えた。

「とにかく、近くにいて欲しい」

蓮に言われて春乃は顔が赤くなる。

「春乃がいなきゃつまらない。あと、春乃のこと、好きかは、まだわからないけど。ちゃんと考えたい。」

「それが嫌だ」

「だめ」

「嫌」

「俺の勝手でしょ」

ちょっと強く言ってみた。

「それでも嫌だよ」

春乃は悲しそうな顔だった。

「分かった…」

春乃は蓮が離れていきそうで怖くて、蓮の顔をみた。

「受験あるしね、高校に入るまでは、忘れる」

「うん！良かった〜！」

春乃がものすごいホッとした顔で笑った。

「ほんと、可愛いね」

と蓮は言った。

春乃は顔が赤くなったが、

「今のバカにして言ってるから」

蓮がそういうと、

春乃は孝司の腕をグーで叩いたあと、笑った。

蓮はホッとして、笑った。