付き合ってるフリ
春乃はとにかくモテる。
中学では、毎年10人以上の男子に告白されている。
ただ、春乃はずっと蓮が好きなので、苦痛でしかない。
蓮は、春乃がそう思っていることに、最近まで気がついていなかった。
気がついた以上、何かしない訳にはいかないと思っていた。
(好きかは分からないけど、大事に思ってるのは間違いないもんな…)
ただ、告白に来る男子、一人ひとりに春乃に代わって、お断りの返事をするのに、蓮は疲れてしまっていた。
「今年、告白されるの多くない…?」
一緒に帰ってる時、春乃にきいた。
「多い気がする…。でも、蓮が断ってくれるから、私は楽…」
「俺は楽じゃない…」
「ごめん…」
「もうさ、付き合う?」
「え?」
「あ、フリ?」
蓮は焦って言った。
「いいの?つき合ったフリしてくれるの?」春乃はすごい嬉しそうに笑っていった。「え…、うん」
(春乃、フリでいいんだ…)
蓮は春乃が求めてこない事に少し寂しさを感じた。
「付き合ってるふりってどうやればいいの?」
春乃は聞いた。
「毎日一緒に帰る?」
「うん」
春乃はフリと言いながらも初彼だと思うとワクワクした。
ニマニマしてる春乃を見て、笑った。
春乃は何かバレたと思って、アワアワしてしまった。
それを見て、蓮はまた、笑った。
春乃は横目で睨んだ。
次の日から、春乃と蓮は一緒に帰ることにした。
(一緒に帰るだけで、春乃に言い寄る男子がいなくなるなら楽だな)
蓮は、そう思ったが、もともと仲のいい二人だったから、思ったよりは、効き目は無かった。
「受験勉強もあるし、もっと告白男子、減ると集中できるんだけどな」
蓮は春乃の部屋に遊びに来てる。
「毎日一緒に帰っても、付き合ってるように見えないのかな…」
「普通に友達に見えるのかもね」
「彼女いたときは、どうしてたの?」
「え?!」
春乃は真面目に、聞いた。
「ん…。手とか繋いだり…」
「…後は?」
「あと?!」
「これと言って人に見せるものは…」
「人に見せないやつって?」
声を低くして、春乃が迫るように言った。
「え…」
蓮は汗をかいてきた。
「別に、皆、普通にやるようなこと…。
…っていいじゃんそんなの」
「ふーん」
「なんで怒るの?」
「別に…」
「カレカノだから…?」
「え?」
(あ、そうだった)。
「ごめん、フリなの忘れてた」
春乃はしょぼんとした。
蓮はなんとなく嬉しかった。
「じゃさ、明日から手繋いで帰ろ?」
「え?!」
春乃は思わず声をだしたが、
「…うん」
と小さく言った。
「…手繋ぐ練習する…?」
蓮は手を出してひらひらした。
春乃は、恥ずかしくて繋げなかった。
蓮は、春乃の手を取った。
「恋人繋ぎ…のほうがいいのかな…」
そう言って指を絡ませた。
春乃の頭がパンクしそうだった。
蓮はぱっと手を離した。
「明日からね」
余裕そうに振る舞ったけど、本当は蓮もすごくドキドキしていた。
「手、繋ぐ?」
学校からの帰り道で蓮は、春乃に言った。
「うん…」
春乃は恥ずかしそうに言った。
蓮はそっと手を取って指を絡めた。
「ごめん!恋人繋ぎは恥ずかしすぎる…」
春乃の顔が真っ赤になった。
「うん、じゃ、普通に繋ごう…」
「うん…」
「良かった…」
「?」
「俺も恥ずかしかった」
二人で笑った。
春乃の手は冷たく、蓮の手は温かかった。
「…春乃の手冷たい、冷え性?」
「…うん。冷え性。蓮は熱いね」
「うん、冷えたことない」
「そんなことあるの?」
「ある」
「いいな~」
なんでもない会話をしててもお互いドキドキしている。
「手繋いでるの見たら、さすがに付き合ってると思うよね」
「見てたらいいね」
「え、見てないの?」
「だとしたら、意味ないね」
「ね」
「ただ、冷えた手温めてるだけ。もしくは、俺の手を冷やしてるだけ」
「冷えたことないんでしょ?」
「うん」
「じゃ、ただのカイロだ」
「人の手カイロ呼ばわりしないで」
「ぬるま湯」
「そこは、温かいお湯…温泉とか」
「どんな効能あるの?」
「リラックス」
(リラックスどころが緊張してます)
そんな会話してたら、2人が、別れる場所についた。
2人は手を離した。
「じゃね」
「じゃ」
別れたあと
(緊張した…)
2人とも同じ事を考えていた。
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