蓮の悩み

春乃は中山晴人のモデルをすることになった。


次の日、学校からの帰り道、春乃の蓮はいつも通り手を繋いで帰っている。

「あのね、昨日、電車で中山晴人に会っちゃって」

「へぇ」

「そしたらね、私の事覚えててくれてて」「へー、すごいね」

「そうなの!でね、」

「うん」

「モデルやってくれないかって」

「モデル?」

蓮は驚いた。

「ヌードとかじゃないよ。普通に服着てだって」

「…大丈夫?」

「うん」

春乃は楽しそうに答えた。


春乃はずっと憧れてた中山晴人のモデルになれてすごく嬉しかった。

モデルをしてくれた代わりにと、大学で彼の作品を見せてもらえたり、面白い話しをしてくれたりした。


「え?中山さんて、17歳なんですか?」

「うん、飛び級でね」

「私の2個上なんですね」

「そうそう。できればさ」

「?」

「敬語やめてくれない?年近いし、話ずらくて…」

「はい」

晴人が横目で軽く睨む。

「あ…うん」

晴人は笑う。

「あと、できればでいいんだけど、下の名前で呼んでくれたら…」

「え?晴人さん?」

「うん、周りの友達、皆そう呼んでるから」

「はい」

晴人は春乃を睨んだ。

「あ、うん」

また笑った。


春乃はよく、晴人の話を孝司にした。

「晴人さんのね、絵を近くで見るとすごいの。すごい細かいし、なのに色使いが大胆で…」

「へー」

「でね、昨日聞いたんだけど、晴人さん、17歳なんだって。飛び級で卒業したって。」

「へーすごいね」

「ね」


蓮は、正直あんまり聞きたくなかった。

自分といるより楽しそうだと思った。

晴人の経歴もすごすぎて、蓮は勝てない…と思っていた。


春乃は、そんなふうに蓮が悩んでいるに、気づいていなかった。


「…」

蓮はずっと黙っていた。

「…どうしたの?」

「うん…」

「?」

「中山先生?」

「うん?」

「好きでしょ?」

「え?!」

春乃は驚いた。

「見てればわかるよ」

「違う」

春乃は必死で言った。

「俺の事好きなの勘違いじゃない?春乃、恋愛偏差値低いしさ。」

嫌な言い方をした。

「も、恋人ごっこやめよ」

「…」

スッと、蓮の指先が春乃の手を離れた。


その後、一緒に帰る事はもちろん、ほとんど蓮と喋ることがなかった。

春乃から話かけても、蓮は1ターンで終わらせた。


蓮は、晴人の事で、ずっと悩んできたけど、春乃は、急に蓮が怒ったと思ったから、訳が分からなかった。


「もう、一生話してくれないのかな…」

春乃は途切れそうな声で呟いた。

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