第2話 公務と不満 

北国ラックラッド王国

無類で無法な強さを誇ったガルシア・ラックラッドが建国した極北にある小さな王国。かつては、大陸全土にその権力を及ぼすほどの力を持っていた。しかし規模は、縮小していき今では、小国に成り下がっていた。


純白の壁に金の装飾を施してあり部屋の至る所に高級品である鏡が貼り付けられている大きく豪勢な部屋の真ん中に一国の王女が寝ている。

「王女様、朝でございます国王陛下への朝の謁見がありますのでお起きください」

そう付き人が大きくはないがとても通る声で言った。

「分かりました起きます。今日の予定を教えて下さいます?」

白くふんわりと膨らんだ布団を退かしベットから起き座りながらそう言った。その言葉遣い一つ一つから知性が感じられ上品さも感じられる。

「今日の予定は、このあと一時間後に朝の謁見がありその後に公務が15時頃までありその後は、自由時間です」

「分かりましたありがとうございます」

それではと付き人であるミレアは言い私の身なりを整える為に別室へと連れて行った。


昨年の冬に前国王である私の父が亡くらられ私の兄である長男のガルス・ラックラッドが王位についた。私の五つ年上なので今年で22だ。そこまではいい。私がどれだけ勉学に励み民の意見を聞きこの国を良くしようと働いていたとしても私が女で三人の兄たちがいる以上私が王位につくことなどないと分かっていたから。しかし兄上たちは、今年の初頭に行われた役職の再編成時に私を蚊帳の外へ追いやったのだ。自慢ではないが私は、武芸に秀でた兄上たちに負けぬよう勉学に励み15のときには、早くも内政に関われるようになっていた。外交においても父上についていき何度も補佐をしてきたはずだ。しかしそれにも関わらず私を重要な役職に付かすことはしなかった。ついた役職は広報官だった。私は、今まで公の場で顔を行事以外で出したことがなく国内の知名度は低いだろう。それに比べて兄上たちは、軍の将についていたり王国の狩猟組合に顔を出しては、国民と狩猟を楽しんだり、ボードゲームの大会に出ては優勝したりと知名度が高く国民からも慕われているはずだ。

嫌がらせとしか思えない。

今日も抗議しようとそう思い謁見の間に向かう。


大きな木製の扉を兵二人が開け石畳の大きな広間に入る。

奥の椅子に座っているのが現国王私の兄上で長男のガルス・ラックラッドだ。

「おはようございます国王様」

そう言い頭を下げる。

「そうかしこまらなくてもよいアリーゼよここには、お前と私しかいないのだから」

朝の謁見。

国王と王室家族と貴族の盟主、外交官そして抽選に当たった国民が国王と一対一で会話を交わす。伝統的な国王の義務だが兄上が王になった際に国民とも対話をするようになった。なんでもこれが正統なやり方なのだとか。しかし該当する人数が多すぎて朝の間に終わらず昼をまたぐのだが。また安全面の問題で襲われたらどうするのかと思うだろうが、歴代の国王は、人外的な強さを誇っている。当代の兄上もそうだ。

つまり大丈夫なのだ。

「それでは言わせ頂きますが」

ここで大きく息を吸い音に変換するように吐き出す。

「内政にっっ関わらせてくださいっっっ!」大きな広間に響く。木製の大きな扉の裏で控えている付き人のミレアのため息が聞こえた気がした。

「駄目だ与えられている役をこなせ」短くしかししっかりと告げられた。でもっと声を漏らすと

「与えられている役をしっかりこなせるようになったら考えてやる以上だ。さて今月中に行ってもらう公務だが経過を聞かせてもらおうか?」

そう言って話は、打ち切られそれ以降会話に出ることはなかった。



失礼しましたと言い扉を出ると頭を抱えた付き人が待っていた。

「そんなことを毎日やっていらっしゃいますといつか逆鱗に触れますよ」

「知らないわよそんなの」

顔を挙げず奥歯を噛み締めながらそう答えた。

「早く仕事をしにいきましょう」

そう言って私は、足早にここから去った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る