第4話

「本当にいいんですか?もう戻れませんよ?」

 神様は少し心配そうです。


「大丈夫です。むしろ早く行きたい気分です。さあ、行きましょう」

 そう伝えればホッとした様子です。

 心が決まれば悩む必要はありません。後は行動あるのみです。


「それじゃ、行きますか。その前に地球の神様に挨拶しとかないと。後処理のお願いもあるし手土産あった方がいいかなぁ?

 あっ、深山さんは待っててもらうのもなんですから、しばらく寝ててください。夢の中で寝ててくださいって言うのも変な話ですけど」

 神様はそう言うと、私の額に手をかざすのでした。その途端に眠気が襲ってきます。


「目が覚めたら異世界ですよ」

 私はゆっくり意識を手放しました。




「深山さん…起きてください…深山さん」

 誰かが呼んでる気がします。


「おはようございます。深山さん」

 ああ、神様でしたか。


「おはようございます。神様」

 目が覚めるとパイプベッドに白いシーツを掛けて寝かされていました。ベッドの周りはカーテンで区切られており、カーテンの隙間からはガラス瓶の並んだ棚が見えます。そして微かな消毒液の匂い。

 ここは紛れもなく…


「保健室?」

 そう、完璧に保健室です。まあ、完璧と言えども、白衣の下に胸の谷間を強調した服を着た眼鏡の女医が居ない時点で減点ですが。


「エロゲじゃ無いんですから、そんな人居ませんて」

 神様、呆れてますね。こんな事考えてたら仕方ないですけど。神様の前ではもう少し真面目にするべきでしょうか?


「そのままでいいですよ?あんまり畏まられてもこっちもムズムズしちゃうんで」

 それは助かります。


「ところで…私の勘違いじゃなければ、ここは保健室に見えるんですけど。異世界に行く話はどうなりましたかね?」

 まさかのドッキリですかね?テッテレーとか言いながらドッキリ大成功の看板持った人が出て来るんですかね?


「ここも異世界みたいな物ですよ?」

 みたいな物と言われても…どういう事でしょう?


「すでに地球じゃ無いという意味では異世界なんですけど、ここが目的地って訳じゃ無いんですよ〜。そういう意味ではみたいな物って事ですね。

 目的地に行く前に、ここで色々やる事があるんですよ〜」


「なるほど、出発前の準備は必要ですね」

 確かにこのまま放り出されても困ってしまいます。魔物のいる世界で武器も無く寝巻き代わりのジャージ上下で行動するなんて自殺行為でしょう。


「そうですよ?そもそも地球じゃ無いんだからその身体のままでは行けませんよ?

 新しい身体も用意しないといけないし特典も決めないといけないし、決めなきゃいけない事はいくらでもあるんですから」


 ……私の旅立ちはまだまだ先みたいです。

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