相手に贈る誕生日プレゼントが決まらないのでダイスで決めることにした

景清(もうすぐ曽根崎さんの誕生日か……)

景清(といってもな。あの人、何が欲しいんだろ。なまじ金がある分、欲しい物は自分で買えるだろうし……)

景清(……)

景清(ダイスで決めてみよう)


1 手作りぬいぐるみ

2 思い出(遠出とか?)

3 健康診断一式

4 料理

5 ゲームソフト(僕付き)

6 僕


景清(こんなとこかな。できるだけお金で買えないものをリスト化してみたけど……)

景清(思いつかなくて最後のほうはヤケクソで埋めでしまった。6番が出たらどうしよう)

景清(ええい、ままよ!)コロコロ


曽根崎「――そういう事情で、このおどろおどろしい人形が私の元へ届けられることになったのか」

景清「かわいいくまちゃんです」

曽根崎「くまに長めのしっぽは無かったと思うが……」

景清「あるんです。僕のくまにはあるんです」

曽根崎「耳なんか三つあるし」

景清「うち一つは鼻です」

曽根崎「じゃあゾウだよ、これは」


曽根崎「だが……うん。しばらく見てたら妙な愛着が湧いてきた。それともそういう魔力が出てるのか? 既に何らかの力を得ている?」

景清「人のぬいぐるみを呪いのブツみたいに言いやがって」

曽根崎「こいつは次の怪異現場に連れて行こう」

景清「だから何らかの力は無いんですって! ただのかわいいゾウさんです!」

曽根崎「ついにゾウって言った」

景清「曽根崎さんにゾウと名付けられたくまです」

曽根崎「柔軟なんだか強情なんだか」


曽根崎「しかし、これをもらったとなると私からも君に何かすべきなんだろうな」

景清「えー、別にいいですよ金券で」

曽根崎「一瞬遠慮したのかと思ったよ。強欲なお手伝いさんめ」

景清「いただけるなら、ぜひ。その分掃除洗濯炊事頑張りますので!」

曽根崎「誕生日プレゼントなんだから見返りは求めてないよ。……」

景清「どうしました?」

曽根崎「私も特に思いつかないな。君、今何か欲しいものはあるか?」

景清「そうですね……。あ、そろそろ洗剤買わなきゃなって」

曽根崎「ベタなボケはいいから」

景清「じゃあ非常食一式ほしいです」

曽根崎「それはガチっぽいけど味気ないから却下だ。……そうだな。私もダイスを振ってみていいか?」

景清「え? まあいいですけど……。手作りぬいぐるみとか当たったら間に合います?」

曽根崎「私を誰だと思っている。針子の魔術師・曽根崎慎司だぞ」

景清「学生時代のあだ名は知りませんが」

曽根崎「とにかくダイスを転がしてみよう。えい」コロコロ


6 僕


曽根崎「……」

景清「……」

曽根崎「そういうわけで君へのプレゼントは私になった」

景清「いらねぇ」

曽根崎「そう言うな。あれか? 四次元ポケットだけ求めてドラ●もん本体には難色を示すタイプのやつか、君は」

景清「なんて残酷な例えを持ち出してくるんですか」

曽根崎「そもそも君もどういう気持ちで自分を選択肢に入れたんだ」

景清「あまりにも曽根崎さんへのプレゼントが思いつかなくて……いっそ内臓を提供してやれって」

曽根崎「内臓」

景清「スペアがあると思ったら生きていくのに前向きになれませんか?」

曽根崎「そんなディストピア的な感覚は抱いたことがないな……。というか君なんだよ、臓器のスペアを手に入れたのは」

景清「喫煙者の内臓はちょっと」

曽根崎「選り好みすんな」


曽根崎「まあ本日、君の誕生日の間だけは私は君のものだよ。好きに使うといい」

景清「使うと言ってもなぁ……」

曽根崎「目に見えて持て余している」

景清「実生活で曽根崎さんが役に立つことって無くないですか?」

曽根崎「誕生日を目前にしてこんな罵倒を受けるとは」

景清「うーん……とりあえずリボンでもつけて飾ってみましょうか。プレゼントはプレゼントらしく」

曽根崎「……」されるがまま

景清「あ、リボンが陥没した。どんな毛量だよ」

曽根崎「ちゃんと回収してくれよ」

景清「だめです、見失いました」

曽根崎「おい」

景清「仕方ない、諦めましょう。忘れた頃に出てくるでしょう」

曽根崎「人の頭を箪笥の裏側みたいに扱うな」

景清「そうだ、ゲームしません?」

曽根崎「切り替えの速さどうなってんだ。線路か?」

景清「実は新しいゲームを買ったんです。謎を解く前に脳が溶けると評判のめちゃくちゃ難しいの」

曽根崎「なぜそんなものを買ったんだよ」

景清「そんな挑戦的なキャッチコピーを出されたら、なにくそ解いてやるぞ! って気持ちになりません?」

曽根崎「販売戦略にまんまと引っかかったわけか。結果は?」

景清「僕の脳が先に溶けました」

曽根崎「悲しいな」

景清「なので曽根崎さんにプレゼントします」

曽根崎「うわこっち来た」

景清「やってみてください」

曽根崎「えー……」


~一時間後~


景清「すげぇ。よくこんなドコドコ解けますね……!」

曽根崎「ゲボ吐きそう」

景清「知らなかったイベントが見れて僕は嬉しいです。どんどん進めてください」

曽根崎「おええ」

景清「がんばってください。だって明日になったら曽根崎さん、僕のじゃなくなるからゲームしてくれなくなりますよね?」

曽根崎「……君が望むなら、この時間を永遠にしてもいいが」

景清「え……」

曽根崎「……」

景清「ちょっと言ってる意味がわかんないですね。あ、新しい謎きましたよ。僕には全然わかりませんが、これ解いたら次のステージに進めるらしいのでよろしくお願いします」

曽根崎「おええ」

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