バレンタインなので阿蘇をチョコで埋める

藤田「オレの手製のやつでな!!!!」

阿蘇「短い人生だった……」

藤田「諦めんなよ! 奇跡を信じろ!」

阿蘇「奇跡起こらねぇと食えねぇもん食わそうとすんなや」

藤田「大丈夫だって。胃薬も用意したし、安心してご賞味あれ」

阿蘇「安心の方向性が事後」

藤田「ふふ、今日はお前だけの為に猛威をふるってやる……」

阿蘇「腕をふるえよ。嵐かお前は」

藤田「それに今回は阿蘇だけじゃありません! じゃん!」バサァッ

景清「ハッ! 道に点々と落ちてた十円玉をせっせと集めてたら、いつの間にかこんな所に!」

阿蘇「えらく古典的な手法で捕まったな、君」

景清「っていうかこれ何ですか。椅子に手足が拘束されて……」もそもそ

阿蘇「藤田の仕業だ。今から俺と君は、奴の手作りチョコを食わせられる」

景清「拷問!!!?」

藤田「いつも頑張ってるご褒美だよ♡」

景清「ご褒美で僕死んじゃうんですか……!?」

阿蘇「おい藤田、景清君だけでも解放してやれよ。俺はどうなってもいいから」

藤田「ご冗談を。二人とも幸せにしてあげるからね」

阿蘇「クソッ、小ボケにもノりゃしねぇ」

藤田「ちゃんとレシピ見て作れば大丈夫だって。えーと、まずはチョコを用意して……。銀紙は外すって書いてねぇな。よし」

景清「ううう、早速やらかしてる気がする。こんな所で死にたくない……!」

阿蘇「早くここから脱出しねぇとな。何とかできねぇもんか」

柊「お困りのようね!」

景清「柊ちゃん!」

阿蘇「うわ」

藤田「あれ、どしたの? なんで窓から登場?」

柊「誰かがボクを呼ぶ声が聞こえたの! この麗しきボクをね!」

藤田「気のせいじゃない?」

阿蘇「気のせいじゃあるか! 助けてくれ、柊!」

柊「あら、なんでアンタ縛られてんの? オイタしちゃったのかしら」

藤田「今からオレの作ったチョコを食べるんだ」

柊「なるほど、だから逃げないように捕まえてると。なんという非道かしら」

景清「柊ちゃん、分かってくれますか! どうか藤田さんを止めてください!」

柊「そうねぇ。止めたいのは山々だけど、ナオカズが二人を喜ばせてあげたい純粋な気持ちも分かるっていうか……」

阿蘇「……」

柊「そうだ! ボクがチョコ作りを手伝うってのはどう!?」

阿蘇「!!!?」

景清「!!!?」

藤田「わあ名案だね! さっすが柊ちゃん!」

柊「でしょう!? 二人で最高のチョコを作りましょうね! ちなみに何作ってるの?」

藤田「ガナッシュケーキ」

阿蘇「よりにもよってちょっと難しいやつを、アイツ!」

景清「ああいう根拠の無い自信持ってる人って、なんでか難易度高いの作りたがりますよね……」

柊「素晴らしいじゃない! で、ボクは何をすればいいのかしら?」

藤田「じゃあ普通のケーキ作るのもアレだし、隠し味とか考えてくれない?」

柊「隠し味、ねぇ。そういえば、最近唐辛子入りのチョコを食べたわ。ピリッとして不思議と美味しいの!」

藤田「それだぁ!」ドサドサ

阿蘇「あーーーーっ! 今致命的にチョコがダメになる音した!!」

景清「阿蘇さん、気を確かに!」

阿蘇「クソッ、こんなことなら死ぬ前にバカ高ぇモンブランケーキ専門店行っときゃ良かった……!」

景清「あ、最近テレビで特集組まれてた店ですよね? 美味しそうでしたよねー(現実逃避」

阿蘇「生まれ変わったら一緒に行こう。奢ってやるからさ」

景清「阿蘇さん……」


曽根崎「今日も今日とて、人んちの事務所で何やってんだコイツら」※外出から帰ってきた


景清「曽根崎さん!(小声)」

曽根崎「何故拘束されている? 至急状況に関する情報をくれ。そもそもなんだ、この冒涜的な匂いは。何が起こってるんだ」

景清「藤田さんが阿蘇さんに手作りチョコテロを強行して柊ちゃんが善意の悪行加担をして僕は巻き込まれて」

曽根崎「分かったようなわからんような」

景清「見つかれば、あなたまで命を落としてしまいます! 僕のことはいいので、早く逃げてください!」

曽根崎「馬鹿を言うな! 君を置いて逃げられるわけないだろう!」

阿蘇「俺を置いて遊び始めるな。はよ助けろ」

藤田「あれ、また誰か来たのー?」

曽根崎「!!」

阿蘇「!!」

景清「!!」

藤田「……誰かの声がした気がしたけど」

阿蘇「気のせいじゃねぇか」

景清「さ、最近裏声が趣味なんです!」

藤田「ふーん」

阿蘇「……」

景清「……」

柊「ちょっと、何してんのよナオカズー! モロロマック焦げちゃうわよー!」

藤田「あ、今行くー」

阿蘇(モロロマック……?)

景清「……ふぅ。な、なんとか難を逃れましたね」

曽根崎「危なかった。ここ最近で一番怖かった」

景清「一番ときましたか……」

曽根崎「確かに遊んでいる暇は無いな。助けてやろう」ぶちぶち

阿蘇「息するように懐からナイフ出すのな……」

景清「ありがとうございます。やっと解放されました」

阿蘇「早く逃げようぜ。事務所が爆発する前に」

曽根崎「いや、そういうわけにはいかない」

阿蘇「ンだよ、まだ何かあるのか」

曽根崎「二人を止める必要がある」

景清「そりゃそうですね。曽根崎さんの事務所ですもん」

曽根崎「というわけで、奴らを誘き寄せて一人ずつ絞めてしまおうと思う。何かいい案は無いか?」

景清「うーん……。あ、柊ちゃんなら」

曽根崎「おお。では任せた」

景清「えーと……。あれ、光坂さん! いらっしゃいませ!」

柊「え、佳乃!!?」シュバッ

曽根崎「忠助」

阿蘇「あいよ」ゴスッ

柊「キュウ」バタン

曽根崎「よくやった。あとは諸悪の根源だけだな」

景清「普段は割といい人なんですけどね、藤田さん……」

阿蘇「この期に及んで奴をフォローするとか、君はほんと優しい子だな……」

曽根崎「まあ奴の弱点は君ら二人だろ。さっきは景清君が頑張ったんだから、次は忠助の番だ」

阿蘇「えー」

景清「お願いします」

阿蘇「んー……」

景清「……」

阿蘇「藤田ー、出てこーい」

藤田「はぁい」ひょこっ

阿蘇「オラァッ」ドスッ

藤田「キュウ」バタン

阿蘇「片付いたぞ」

曽根崎「何の面白みも無い呼びかけだったな。当て身食らわせるんだから、ちょっとは甘い言葉ぐらいかけてやれよ」

阿蘇「これ以上俺に業を背負わせるな」

景清「阿蘇さん、何の気も無く言ってますけど、それ相当重い言葉ですよ……」

曽根崎「とにかく片付いたな。金は出すから、二人でキッチンを掃除してくれ」

景清「わぁぁ見るも無惨な爆心地!」



その後

藤田「ハッ! オレは一体……!」

阿蘇「おはよ」

藤田「おはよう、阿蘇! オレ、お前にチョコを作ってたはずなんたけど……」

阿蘇「残念だったな。日付は変わって今日は2月15日。お前がチョコを作る理由はもう無い」

藤田「そ、そっかぁー……。ちぇっ、今年こそはと思ったんだけど……」しょんぼり

阿蘇「うん」もぐもぐ

藤田「……何食ってんの?」

阿蘇「チョコ」

藤田「誰からの?」

阿蘇「お前からのだよ」

藤田「……え、あの唐辛子入りどんどこパワーチャージチョコ食ってくれてんの?」

阿蘇「なんつー素っ頓狂なネーミングセンスだ。違うよ。キッチンに積み上がってた廃棄物の横で、ひっそり銀紙の中で難を逃れてたチョコだ」

藤田「あ……」

阿蘇「……俺はこれで十分だよ。お前が無理して俺に何かしてやろうなんて、考えなくていい」

藤田「阿蘇……」

阿蘇「……」


藤田「いや、オレは無理して料理してたわけじゃねぇよ? つーかそれ市販チョコじゃん。オレの愛情ねぇじゃん。ノーカンじゃん」

阿蘇「クソッ、ごまかせなかった。アホ言え、チョコメーカーの愛と情熱と企業努力が存分にこもってるわ」

藤田「それにオレの愛も足してだな!」

阿蘇「足したら廃棄物レベルのものができんだよ! 不思議とな!!」

藤田「分かった! オレを食べてくれ! ベッドとかの上で熱烈に!」

阿蘇「ほら来た! 毎年そう! 俺もうお前の友達やめたい!」



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