折り畳み傘(阿蘇、藤田)※高校生

 雨が降っていた。

 まず思ったのは、家に置いてきた傘のこと。この分だと相当濡れて帰らなければならないな、と覚悟して、俺は下駄箱へと向かった。


「あれ」


 すると、自分の靴のある、そのスペースに。

 一本の青い折り畳み傘が、突っ込まれていた。


「……」


 手に取り、眺め回してみる。名前は書かれておらず、置き手紙も無い。それで、この傘は藤田のものだと分かった。

 雨が叩きつける外に目をやる。当然、アイツの姿はどこにも見えない。

 ――彼女だか、彼氏の傘だかに入れてもらったのだろうか。

 そうだといいのだが。


「……これ、風邪をひいてたら見舞いに行かなきゃいけねぇヤツかなぁ」


 靴を履き、外に出て、傘を差す。

 青空よりも断然青いその傘を見上げ、俺はため息をついたのだった。

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