ダン
むーが
出会い
灰色の一色の空。木の葉が風ではためき、ガサガサと音を立てる。通り過ぎた車から排気ガスの臭いがする。
そんな中、日課の散歩をしていた。
途中、置かれていたレジ袋がやけに気になった。
なんだろう、これ?
しかも風の吹く方向とは逆に転がっているのだ。明らかに中に何かがいる。
レジ袋を拾いあげると小さめのペットボトルくらいの重さを感じる。
一体、何がいるのかドキドキしながらレジ袋の結び目をほどく。
中を覗くと、そこにはクリーム色のトカゲ(仮)がいた。手のひらサイズくらい。
トカゲにしては大分丸っこくて、ぬいぐるみみたいで可愛い。
トカゲは私にジッと目を合わせた。
何かされるのかと身構える。
「キュー?」
トカゲは口を開けて鳴いた。
え? 今の鳴き声ってトカゲが鳴いたの?
周りを見ても、そんな音が聞こえそうな物はない。
やっぱりトカゲが鳴いたんだ!
鳴き声まで可愛いなんて、そんなの反則だよ!
私が心の中で悶えているとまたトカゲが鳴いた。
可愛い!
地団駄を踏みそうになるけど必死で抑える。
これだけ可愛いと飼いたくなっちゃうよ!
駄目だよ、私。ペットを飼う余裕なんてないの。それにトカゲは虫を食べるんだよ。虫が苦手な私じゃ餌をあげられない。
そう思っているとトカゲがレジ袋から出て私の腕に登ってきた。
トカゲが目を細めて頭をスリスリする。その後、私を見つめてくる。
「キュー」
ハッ、これはヤバい!
咄嗟に顔を反らし鼻を手で抑える。
しばらくして手を離して確認しても鼻血はついてなかった。
大丈夫だね。良かった。
他の人に鼻血出している所は見られたくない。
トカゲが可愛い過ぎて駄目だ。このままだと私の鼻が持たない。早く家に帰らないと!
駆け足で家に向かう。家の鍵を開け、家の中に入り一息つく。
あっトカゲ持ち帰ってきちゃった。餌とゲージ、どうしよう。
それに家に段ボールが大量に置いてあるからゲージの置く場所も確保しないといけない。
「キュー!」
トカゲが腕から降りて何故か段ボールが折り重なっている所へ。
何をするんだろう?
トカゲは口を開けて、おもむろに段ボールを食べた。
た、食べた!? え? どういう事? トカゲって虫を食べる訳じゃないの?
私が困惑しているうちに段ボールが一つ消えた。勿論、トカゲが食べたのだ。
そのトカゲはというと二つ目の段ボールを食べている。
慌ててトカゲの所に行きトカゲを捕まえる。
トカゲは、じたばたしていたけど私が離さない事に気付いたのか大人しくなった。
「キュー?」
うっ、可愛い。だけど、ここで負けたら駄目よ。
ちゃんとした餌とかゲージとか用意するまでは変な物を食べさせちゃいけない。鉄壁の意思で拒否するんだ!
「キュー、キュー?」
トカゲはつぶらな瞳で私を見てくる。
可愛い。でも、まだ耐えられる。
「だ、駄目よ」
「キュキュー?」
トカゲは小首を傾げてきた。
嗚呼、可愛い過ぎる……!
「だめ」
「キューキュー! キュー?」
手にスリスリしてくる。
もう、そろそろ私は限界だった。
「……」
「キュー?」
止めと言わんばかりに尻尾を巻き付けてきた。
あっもう、むり。
「どうぞ」
「キュー!」
飼い主なのに、こんなので良いのかな……?
少し不安になるけど飼うと決めたからには頑張らないといけない。
可愛さで倒れないように気合いを入れてやっていこう! エイエイオー!
あっトカゲが真似してた。
可愛い。もう、ダメ。
そんなこんなで私とダン(トカゲの名前)の生活は始まりを告げた。
ダン むーが @mu-ga
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます