第三十八章【未来編】「属性、本当の強さ、自由自在」
「リルドブリケ島では、あらゆる存在がその中心に振動する『波』を持っている。この波にはタイプがあって、それを『属性』と呼んでいるわけだ。一方で世界の方も見えない振動する『波』に満ちていて、こちらにも様々なコントラストがある。あの世界での『魔法』っていうのは、自分の中の『波』の波長と、世界の方の『波』の波長が共鳴して発動するんだ。現実世界のラジオの周波数をイメージするとイイかもしれない。『属性』っていうのは、いわば周波数の『合わせやすさ』だ。水の『属性』の人間は、世界の水の『属性』の波に合わせやすいから、水の魔法が使える」
父が、
「その点、
「というと?」
「炎は、そのままでは愛姫子ちゃんの体に合わないから、
「それが、愛姫子の熱の原因ですか」
「そう。だから、ショックを受けないように『慣らす』プロセスが必要だった。
石板は変換装置にして、調整装置なんだ。リルドブリケ島に満ちる炎の「波」が愛姫子ちゃんに合わないこと自体は変わらない。だが、調整された石板をとおして愛姫子ちゃん自身の「波」と合わせるようにすることによって、全体としては何とか調和するって寸法だ。さっきのラジオの例なら、石板を経由すれば、炎のチャンネルから聴こえてくる大音量でロックな音を、愛姫子ちゃんは自分に合ったボリュームで受け取りやすいように聴けるってこと」
「『慣らす』という考え方は分かりましたが、なぜ、炎の石板は現実世界の未来に、ギターに姿を変えてあったんですか? 『日常』の力が、必要だった?」
ロビホンさんが言っていた、「日常」の力。それは、リルドブリケ島だけでなく、現実世界にもある気がする。
「かもしれん。
父は、未だ明けぬ空を背にして、居住まいを正した。
「生きてるお前たちは、そろそろここを立ち去る時間だ」
大人・由々の部屋でギターに触れた時に発せられた光と、同じ性質の光がこの世とあの世の狭間の山頂を包み始めた。
光に霞み始めた父が、
「炎は、嫌だよな。熱いし、
父の言葉は光で。どこか、儚かった。
「立ち向かう気なんだな。
──そうだね。お父さんは、僕にとっての……
「マーメイヤも強いが、本当の本当にこの世界で一番強いのは、おまえ達のお母さんだ。そっちの『本当の強さ』は、
──お母さんが、強い?
母、
「おまえにあるのは、俺っちと同じ、ため息をつきたくなるような全てを切断する剣の才能だけだ」
──分かってる。僕は、残酷な性質の人間だ。
「でも、切断する力も世界には必要だ。結局、俺っちに出来るのは、切断の手助けだけなんだなぁ。由々。大城一刀流の奥義、まずは第三奥義だが、インスピレーションが降りてきたら型は手放していい。『自由自在』ってことを、便宜上『大城一刀流』と呼んでいるだけだからな」
光がいよいよ強まってくる。この、父との不思議な
「由々」
──はい。
全てが光に包まれて何も見えなくなる間際、父は、こんな言葉を由々に残した。
「最後に勝つのはロックだ」
/第七部【未来編】「たとえ全てが終わっているのだとしても、僕はキミを●してる・上」・完
第七部・下へ続く
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