第15話
アイちゃんによる性癖暴露大会は冒険者組合に着く頃まで続き、俺の精神は崩壊寸前だった。逆に姉妹達はご機嫌なようでニコニコとしている。
アイアンハートで有名な俺と言えどこれ以上はいけない。俺はふらふらとしながらしながら冒険者組合の建物に入っていく。
入ったところで横から声がかけられる。
「よぉ!ノインさん!待ちくたびれたぜ!」
アイクが酒を片手に手を大きく振っているのがみえた。パーティーメンバーの3人も手を上げている。すでにみんな飲み始めているようだった。
もう日が暮れているというのに、冒険者組合は商業組合とは逆に人が非常に多くとても騒がしい様相だった。
「お待たせしてすみません。ちょっと商業組合に寄っていたもので。」
「なんだそうだったのか。まぁいいやとりあえずこっちきて座れよ!おいお前ら悪いがちょっと席を空けてくれ!おれの客だ!」
アイクがそう言うと横に座っていた冒険者達は渋々席を立ち別の席に移動していった。
「わざわざすみません。」
俺は席を譲ってくれた冒険者たちにお礼を言い席に座る。
「悪いな一杯奢るからよ!」
「ひゅー!流石アイクさん!」
それを聞き席を譲った冒険者たちは機嫌を良くしたようだった。
「悪いな騒がしくて。」
「いえいえ本日はお招きいただきありがとうございます。しかし凄いですね冒険者組合の中に酒場ですか。」
「おう!依頼の後はここで飲む冒険者が多いんだよ。さっきの奴らみたいにむさ苦しい奴らが多いのがたまに傷だが……飯もうまい!まぁ冒険者の醍醐味の一つだな!」
「そりゃひでーぜ!アイクさん!」
「まぁ違いないが!!ギャハハハ!」
「アイクさんのお客ってすげー美女ばっかじゃないですか!俺らも混ぜてくださいよー!」
後ろから先ほどの冒険者達の声が聞こえる。酔いも回って大分ご機嫌なようだ。
「うるせー!この人たちはこう見えて多分お前らより強いぞ。半殺しにされたくなかったら大人しくしてろ!」
その言葉にアインス達は半殺しにしますか?みたいな顔で俺を見ているが無視することにする。後ろの冒険者達もノリで言っているだけのようでアイクの言葉に笑ってそれ以上は特に何も言ってこなかった。
「んじゃ揃ったことだし乾杯するか!何を飲む?ここは品ぞろえもいいぜ。」
と言われてもこの世界のお酒は何があるかわからなかったので、おすすめのものを聞いてみた。
「そうですね。せっかくこの街まで来たので、おすすめがあればそれを飲んでみたいです。」
「おすすめか~。俺はいつも同じだからよ。そういのはルイが詳しいぜ。」
「ふむ……そうだな葡萄酒はどうだ?この街の葡萄酒は香り高く飲みやすいことで有名だ。きっと気に入ると思う。」
「ではそれをお願いします。」
そういえばお酒は久しぶりだな。前の世界にいた頃は弱いこともあってめったに飲まなかったが楽しみだ。
「アインスさん達はどうします?」
「私達も葡萄酒飲んでるけど美味しいよ。」
フレンとリサが姉妹達に問いかける。
「では私もノイン様と同じもので。」
「ウチも~。」
「わたしも……それでいい……。」
「葡萄酒4つだな。すまない!注文を頼む!」
ルイが店員を呼び注文を済ませた。
しばらくして葡萄酒と共に、様々な料理が運ばれてくる。
「いよし!準備は万端だな!んじゃ俺たちの出会いに!乾杯!!」
アイクの乾杯の音頭に皆ジョッキを掲げ声を上げる。
ルイにおすすめされた葡萄酒は言うだけあってかなり美味しく気を付けていないと飲みすぎてしまいそうだった。そして料理も見た目を裏切らない美味しさで俺たちを非常に満足させるものだった。
そうしてしばらくアイク達と楽しく会話をしながら飲み進めていた。ちなみに俺は完全状態異常耐性のパッシブスキルのせいか全然酔えないみたいである。無念……。
酔いも程よく回って来たようでアイク達はご機嫌であった。俺も酔えないながらも楽しんでいるとアイクは俺を見つめながら飲み始めからずっと疑問に思っていた事を俺に告げた。
「しかしノインさんは食事中もその頭の怪しい装備外さないんだな!よくわからねーけどなんか食べれてるし!」
「あーそう言えば。そうでした外しましょ…う……か……いえ何でもないです。」
頭の装備を外すそぶりを見せるとアインス達からもの強烈な無言の圧力を向けられたので即座にやめる。
「そこまで言ってそりゃないぜ!脱いでくれよ!」
一度了承しかけた手前、どうしたものかと思っていると。なにやら姉妹たちが子芝居を始めた。
「アイクさん……。実はノイン様のお顔には大きな傷と火傷の痕がありまして……それはもう酷い傷跡で……。」
目の端に涙をためながら悲壮感を全開に語りだす。
「そう……昔魔物からウチらを守るために……グスッ……。」
「傷跡見せると……みんな怖がる……石を投げる……あと私達の為に……隠してくれてる……。」
この子たちは何を言い出したのだろう……そんなことで皆騙されるわけ……。
俺はこの後どうしようと考えを巡らせる………………んっ?急に静かになったな……一体……。
不思議に思った俺が周りを確認しようとするとドンっとジョッキを机に叩きつける大きな音が響き渡った。
「うぅぅぅ……なんだよそれは……ちくしょう!いい話じゃねーか!……うう。この子たちを守るために……!やるじゃねぇか!それでこそ男だぜ!うぅぅぅ。」
「…………。」
おいおいおいおい!コロッと騙されてるよこの人!チョロすぎだろ!
「ふむ……素晴らしいな……ズルッ……」
「ズビー!わーん!ノインさんにそんなつらい過去があったなんてー!ズビー!」
「ええ……自身もお辛いでしょうに……思い出させまいと傷跡を隠して……。スンッ……。」
「………………………………。」
おいおいおいおいおい!全員かよ!飲みすぎ?飲みすぎなんですか!?チョロすぎってレベルじゃねーぞ!
アインス達はさらに続ける。
「ええ…ええ!そうなのです!ですのでこの装備は私達姉妹とノイン様の絆の証なのです!」
「ウチらがノイン様に守ってもらったように今度はウチらが守るの!」
「そう……だから護衛をするために……強くなった……」
最近アインス達がアイちゃんの悪影響を受けている気がする……。
《失礼な。完璧なフォローです。流石は私の妹達ですね。》
今の子芝居を受けてアイクたちはさらに号泣している。
「うぅぅぅぅ……うおぉぉぉぉん!!!そうとも知らず俺は!…俺は!すまないノインさん!!!……うぅぅぅぅ。」
純度100%の完全な嘘なのでなんだか悪い気がしてきた……。い、居心地が悪い。
アインス達を見てみると、かましてやりましたよ!みたいな様子でサムズアップしている。
俺は頭を抱えた。しかし、事態はさらに悪化する。
「おい!お前たち聞いたか!ノインさんにはこんな悲しい過去があるんだ!この変な怪しい装備を馬鹿にするやつは俺が許さねぇぞ!!」
あろうことかアイクはその場にいる冒険者たちに向かって大声で叫び始めた。周りの冒険者達もアインス達の子芝居をしっかり見ていたようで。目頭を押さえながら口々に俺に声をかけてくる。
「変な装備だけど大丈夫だぞー!うぅぅ。」
「感動した!うぅぅぅ……変な装備だけど俺たちが付いてるぞ!うぅぅぅ……。」
「変じゃないわ!!」
思わず突っ込んでしまった。……俺のお気に入り装備なのに……。一番かっこいいのに……。どうしてこんな事に!俺は今日はこの場で冒険者の事について色々聞こうと思っていたのに!
《まぁまぁ。これでマスターもこの街で住みやすくなりますよ。》
「ちくしょう!俺は飲むぞ!!酔えないけどな!!!」
もう色々どうでもよくなった俺の叫びにその場にいた全員が盛り上がる。
「それでこそだ!さぁー!飲むぞーーー!」
アイクが俺の言葉に乗っかりさらに場を盛り上げると周辺にいる冒険者を巻き込んでの大宴会へと変わっていった。
宴会は冒険者組合の職員に注意されるまで続き夜は更けていったのだった。
謎の大宴会を終えた俺たちは組合の外に出ていた。
「うぃ~。んじゃノインさんまたな~~~~~!」
「今日はありがとうございました。あと宿の件も。」
「いいって~~~~ことよ~~~~!うぃ~~~。じゃあな~~~~!!」
アイクは完全に出来上がっており、それを介護しながらアイクの仲間達も帰っていく。
俺たちはというと、嘘100%の子芝居をきっかけに始まった大宴会のせいで、予想以上に時間がたち宿を探す時間がなく困っていたのだったが。
どうやらアイク達が冒険者組合の職員に事前に話をつけていたらしく組合に併設されている宿屋に部屋を取ってくれているようだった。
職員に案内され併設されている宿屋まで行く。
案内された部屋は簡素だが清潔感があり、普通に泊まる分には問題なさそうだった。
色々あって精神的に疲れたので今すぐ眠りたいが、今日得た情報のまとめをアイちゃんが報告したいらしい。
魔術の解析を頼んでいたしその件だろうと思い当たった俺はそれを了承したのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます