第2話
アイちゃんより告げられた衝撃の事実にまだ少し混乱はしているが、とりあえずモニターに映し出されている惑星について聞いてみることにした。
「ところで未知の惑星って言ってたけど……その…………なんだ、ESOの時のように知的生命体とかいる感じ?」
《今のところまったくの不明です。しかしこのような事態になったあと目の前に現れた未知の惑星です。もしかしたら事故を引き起こした原因の何か手がかりがあるかもしれません。つきましては先行して調査ポットを送り出したいのですが許可をいただけますか?》
調査……か、ゲームでは散々行ってきた事だけど、いざ現実になってみると同じやり方で通じるのかという不安を少し感じた。
アイちゃんが言うように目覚めた瞬間に目の前に現れた未知の惑星、確かに怪しすぎる。しかし、このとんでもない状況を作り出した原因を突き止めてどうすればいいのだろう……。
わからない…………元の世界に戻りたいか?と問われても即答はできない。家族もいない……戻れたとしても元の世界の俺の状況がどうなっているのかも不明……。
それに……今の俺は自身の人生の大半をつぎ込んできたESOのキャラクター【ノイン】のまま転移しているのだという。
俺が愛し憧れた世界が、冒険が、今目の前にあるのだ、現実として。この状況に少しもワクワクしていないと言ったら嘘になるだろう。
今ここでいくら考えても答えは出そうにない、ただの問題の先送りだがとりあえず帰還云々は一旦置いておいて、この転移の原因を調べてみるしかないか……。
手がかりがあるとすれば目の前にあるこの未知の惑星。
覚悟を決めた俺はアイちゃんに指示を出す。
「許可するよ。とりあえず、ESO時代のセオリー通りで良いかわからないけど同じように進めてみてくれ。あと可能なら大気の成分の検査とかもお願い。知的生命体の調査は降下して現地で行うからやらなくていいよ。」
《了解しました。》
とりあえずの指示は出したので一息つこうとしたが、ふと疑問に思ったことがあったので聞いてみた。
「ちなみになんだけど、ここからESOに存在していた惑星とかに行けたりする?」
《今のところ不可能です。ここ自体が未知の宙域であり現在どの銀河系にいてどの座標にいるか全くの不明なため航路をとれません。それに次元潜航装置も故障しているため長距離の移動も不可能です。》
「少し期待したけどやっぱり無理か……。了解した調査を進めてくれ。」
《了解しました。》
もしかしたらと思って聞いたがやはり無理らしい。少し残念な気持ちはあるが俺は気持ちを切り替えることにした。
アイちゃんが調査ポットの設定を終え一区切りついたことでどっと疲れが出てきた。
ただゲームの最終日を楽しく遊ぼうとしていただけの所にいきなり降りかかったこの摩訶不思議な事件である。元の世界ではただのしがないサラリーマンだった俺だが、よく取り乱さなかったものだ。
それもこれも近くにいてくれる存在がいたからかもな…………ふとそんなことを思った。自分が危険な状態だったのにも関わらず俺を守ってくれたようだし。本当に一緒にいてくれて助かった。そう思い今の素直な気持ちを伝えた。
「アイちゃん色々助けてくれてありがとう。君がいなかったらこんなに冷静になれていなかったと思う。」
《どういたしまして。マスターがこの先何を目指すのか今は解りませんが、マスターの進む道が私の道です。どこまでもあなたと一緒に進みます。》
その素直な言葉はとても嬉しかった。
今でこそとても流暢に喋れてはいるが感情の起伏は前と変わらずとても小さい。
しかしその言葉の端々に優しさや信頼の感情が溢れていることに俺は気が付いた。
改めて心の中で感謝するとともに、その信頼に答えなきゃなと決意を固めたのだった
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