未開惑星突入編

第1話

《・・・ター・・・てくださ・・》




 遠くから声が聞こえる。




《・・スター・・きてくださ・・》




 誰だろう……。優しい声だ……。もう少し……寝かせ…………。





《マスター起きてください。・・・反応なし・・・マスター復帰の為に電気ショックが必要と判断。実行します。電気ショック準備・・・完了・・発動まで、3.2.い・・・》



 (ん……この声はアイちゃんでは……?電気ショックって何!?)

「まって!電気ショックて何なのさ!」

 物騒なワードに危機感を覚え跳ね起きたが、時すでに遅く。



《マスターの復帰を確認。止められないので電気ショック実行します。》

「なんで!?アバババババアバッバババババババ!!!」


 無情にも無事に元気ショックが発動されるのであった


《完了。おはようございますマスター。良い天気ですね。》


 何事もなかったかのように挨拶をしてくるアイちゃん。


「おはようございます…………あれ?俺は何をしてたんだっけ……確か最終日のイベントに向かうために次元潜航して……」


 起床後、即電気ショックという罰ゲームを味わった俺は大いに混乱していた。

 というか電気ショックって何だ!?そんな機能あったか?そんなことを考えていると。


《マスター。まだ混乱されているようですね。了解、電気ショックを再度実行します。》

 と、またまた物騒なことを言い出したので必死で止めに入った。



「すとーっぷ!電気ショックは無しでお願いします!というかごめん!混乱はしてるんだけど今どういう状況なのかわかる?」

《残念ですが了解しました。現在の解っている状況を説明します。》


 そう切り出すと、アイちゃんは今置かれている状況を説明してくれた。



《マスターの指示通りゲーム最終日のイベントに向かうため予定のポイントから次元潜航を開始。しかし潜航して2分37秒後に機体に大きな衝撃を受けました。その衝撃が原因か不明ですが、次元潜航装置にエラーが発生し、機体を制御していた私もその影響を受けシステムエラーとなりました。その際のエラーログは消失しており今のところ詳細は不明です。》


「ふむふむ。」


 確かに何かものすごい衝撃を受けたことは覚えている。でもいったい何だったのだろう?未知のイベントかと思ったけどそういうわけでもなさそうだし。

 とりあえず話の続きを聞いてみることに。


《続けます。私は何とか自身のシステムを気合で復旧させ、マスターの状態を確認、結果マスターの意識が混濁状態にあったため緊急措置として別空間に隔離、治療を行いました。》


「それはそれは・・・ありがとう助かったよ。」


《いえ。マスターの安全は私の中で最優先事項です。》



 俺を守ってくれたのか・・・。ありがとうアイちゃん・・・・・と心の中で思ったのだが、それよりも非常に気になっている点がある。


「ところでアイちゃんってそんなに流暢に喋れましたっけ?確かにある程度の受け答えはしていた気がするのだけど命令に対する返事程度しか・・・・。」


 そうあまりにも受け答えが自然すぎるのだ。ゲームではありえなかった、まるで意思を持った人と話しているような感覚。これは明らかに異常な事だった。



《その前にこちらの映像をご覧ください。》


 そう言ってモニターに惑星の映像を映し出してきた。


「この惑星がどうしたんだい?」


 意味が解らなかったので素直に聞いてみることにした。するとアイちゃんがとんでもないことを言い出したのだ。



《この惑星はには存在していない未知の惑星です》


「・・・・・・はい?」


 思わず間の抜けた声を出してしまった。



(未知の惑星……言っている意味はわかる、しかしゲームには存在していないというのは…………そもそも、なぜアイちゃんはこの世界がゲームということを認識して喋っているんだ……)



《ですので、未知の惑星です。あとなんでかは解りませんが、今いるのはゲームではなくのようです。》




「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・はい?」




 突如告げられた宣言に完全にキャパオーバーした俺は情けない声を絞り出すので精一杯だった。





 アイちゃんの衝撃宣言に固まっていると。アイちゃんが《む・・電気ショックが必要そうですね》と物騒なことを言い出したので慌てて意識を戻し再度訊ねた。


「・・・ごめん現実世界って聞こえたんだけど・・・・。本当に?あと電気ショック準備するのやめない?」


《本当です。どうやら我々はESOのゲームアバターのまま現実世界に転移してしまったようです。おそらく件の次元潜航時のエラーが原因かと思われますが詳細は不明です。》


 そんな荒唐無稽なこといきなり言われても信じられるはずがない。

 しかしアイちゃんの反応を見るに、ゲームの時と違うのは明らかなのだ。

 しばらく考え込んでいるとアイちゃんが口を開く。


《マスター、ゲーム時代と比べて体が自然に動きませんか?》


 ハッとした。言われてみれば確かにそうなのだ。いくら当時最新鋭の技術といえどESOは20年前の古いゲームだ、今のゲームに比べると体の動作がぎこちない部分はもちろんあったし、現実世界と同じ感覚で体を動かすなんていうことは不可能であった。


《それに私がこうしてマスターとお話しできているのはゲームでは絶対にあり得ません。》


「…………それは本当にそうだね。」



 その一言に俺は妙に納得してしまったのであった。

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