第19話
「ごめんね。蒼太くん」
里運のホームランサーブが直撃し、連れてこられたのは保健室だった。
鼻血も出ていなくて、ただ倒れただけなんだけどな。
保健の先生に安静にするように言われたが、特にやることがない。
何をやるか一生懸命考え、天井を眺めていた俺を一番初めに見舞いに来たのは里運だった。
「別にいいよ」
「できると思ったんだけど、二回目で失敗しちゃって」
「知ってる。一回目は上手かったな。誰かに教わったのか?」
「相手のバレー部の人がやってたから、やってみたくって」
「それであれできるのかよ!」
何も教わってないのに一発でジャンプサーブを成功させるって、マジかよ?
「それに」
「それに?」
「蒼太くんがきてくれたから、嬉しくって」
髪の毛を指でいじりながら、はにかむ里運。
ほんと、運命って言わなければ可愛いのに。
「あっそ。それで試合はどうだったんだ?」
ボールが直撃してすぐにぶつかったから、こいつの試合は最後まで見れてないんだよな。
まぁ、見れたからと言ってそんなに変わるものではないけど、あれだけ接戦だったから結果くらいは知っておきたい。
「負けちゃった」
「負けたのか?」
バレー部対里運だったからな。
負けるのも分からなくはないが、こいつが負けるなんて。
「四〇対四十二で。ごめんね、蒼太くん」
「何で謝るんだよ」
「当てちゃったのに勝てなかったから」
「別にいいよ」
いつも運命運命言ってるくせに。
こういうところが嫌いになれないんだよな。
「そういえば今日ね。『おは占』で蒼太くんが最下位で。ラッキー―アイテムが公園にあるって言ってたの! だからね――」
「表彰式やるってよ」
「分かった今行くよ」
雄介が保健室に入ってきて、俺はすぐ里運を連れて体育館へと向かった。
さっき里運が何か言った気がするがいつものやつだろう。
このとき里運の話をもっと聞いといたほうが良かったかもしれない。
表彰式が終わり、学校が終わって里運と一緒に帰った俺は、アニメを見て、寝ようとしていた。
そんなときだった。
インターフォンが鳴った。
誰だよと思いながら出ると、おばさんが真っ青な顔で玄関に立っていた。
「蒼太くん、里運を知らない?」
「知らないですけど」
普通に帰ったはずだしな。
「里運がいなくなったの」
「え?」
いなくなった?
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