第十八回

 警察がやって来た。白ヘルメットはうなだれて座り込んでいる。逃げる気配もない。

 「悪かったよ、俺……俺……」

 座り込みながらぶつぶつ言っている。

 私は仕方なく言った。

 「まったく。反省する気持ちはある様だな。それならうんと反省して出直してこい。どんな事情があるにせよ、悪いことをしていいことにはならない。お前は悪いことをした。刑務所で罰を受けるのは当たり前のことだ。でもうんと反省するってんなら、どうやらそれでお前の人生は終わりじゃない。お前はこの先良くなる見込みがあるってことだ」

 ヘルメットはハッとしたように私の方を見た。黒いシールドに覆われてヘルメットの顔は見えない。けど何か思うところがあるようだ。私は続けて言った。

 「人生は一回きりだ。その一回くらい良い人間でいろ」

 しかし白ヘルメットが反論する。

 「けどよ、その一回を俺は台無しにしたんじゃないのか? 俺はもうお前らとは違う、真っ当な良い人間になったり、暮らしたりはできないんじゃないのか」

 「甘ったれるな。そんな心配は後だ。まずは反省してからだ。反省する前から反省した後のことを考えるな。お前が反省せずに刑務所から出てまたひったくりをするなら同じことさ。何の成長も無い。振り出しに戻るだ。いや、振り出しより悪いかも知れない。知ってて繰り返すのだから。マイナスかもしれない。けどな、お前が自分を改めてもう悪いことをしないのなら、それはお前にとって変化だ。今までにはなかった新しい変化だ。そしてそれは良い変化だ。その方へ進め。そしてそれを繰り返して、続けろ。明るく感じる方へと進むんだ。そうすればお前はその先に居る、他の者達とそのうち合流するだろう」

 白ヘルメットは警察に促されて、パトカーの方へと向かった。見ると、原の向こうの道路には幾つものパトカーが停まって赤いランプを回している。線路の周りの草むらでは警察官達が何やら調べている。花井さんは白ヘルメットを見届けていた。マルは辺りを遊んでいた。私は花井さんに向かってニコッと笑って言った。

 「大変でしたね。行きましょう」

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