第十三回
辻のところまで自分も一緒に走ってくると、倒れたお婆さんは近くの通りがかったサラリーマンに起こされている。
私は逃げたバイクの方を見た。白ヘルメットの男は背中を見せ走り去っていく。花井さんもバイクの行方を見ている。お婆さんを見ると、サラリーマンに起こされ、腰を擦りながらも大した怪我は無さそうだ。
しめた、と私は思った。私はこの道の先が、迷路のように入り乱れているのを知っていた。
今から走って追いかければ、道の途中であの白ヘルメットを捕まえられるかもしれない。
騒ぎを聞いた周りの家の門から、幾人もの人がちらほらと顔を出してきている。救急車や警察への通報は彼等がするだろう。
お婆さんのことはサラリーマンに任せて、私はバイク目掛けて走り出した。──と、その瞬間、私よりも先に、花井さんが私の前をもう走り出していた。
通りを右へ左へと全速で私は走っていく。角を曲がった所で、人にぶつかりそうになって驚かれた。立ち止まると、何処かで奴のバイクの走る音がしている。
私は走っているうちにいつの間にか下の道を見下ろせる高い所に出た。すると下の道の向こうから、奴がバイクで白煙を上げながら一直線に走ってくる。あいつも追われていることに気付き始めたのかもしれない。
白ヘルメットが通る時、私は奴に体当たりでぶつかってでも捕まえてやろうと一つ上の道から飛びこんだ。
しかし、すんでのところで白ヘルメットは私を通り過ぎ、白煙を上げて走り去ってしまった。
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