第16話
しばらくして、一台の馬車が家の前に止まった。
みんなは食事の手を止めて、玄関まで見に行くといい。私もみんなの後に着いて、玄関に向かった。
玄関横の小窓から見えたのは、車輪の付いた箱と馬と、人の真っ黒なシルエットまるで……
「か、影絵?」
に見えた。
「それはね。マージアさんに昨日私たちが昔、人の奴隷になっていたと説明したわね」
「はい」
「私たちの中には人間を恐る者もいるの、外の世界は全て影絵の様に見えるよう、魔法がかかっているの」
だとしたら、この馬車に乗って来たのは誰?
御者らしき人が操縦席から降りて、馬車の入り口を開けた。馬車の中から一人、もう一人と降りてきた、この二人は馬車の入り口で向かい合って足を止める。
「レオン様、あの人間達は――この家に用があるようですね」
「そうだな……ボア、今後のこともある、この者達の姿が見えるようにしてくれ」
「わかりした」
レオン様の命令で、ボアさんは指をぱちっと鳴らした。
影絵から、はっきり訪れた人物が見えるようになり、私はその人物に息を飲んだ。
だって……この家に来たのは学園で一緒だった魔法使いアッサン様と騎士マッケン様。その彼らが馬車からエスコートしたのは……ヒロインのススリさん?
(彼女がとうして、ここに来るの?)
アッサン様はこの家を指して、ススリさんに話しかけた。
「ススリ様、本当に、このボロ屋なのですか?」
「えぇ、間違いなくここよ」
玄関に移動した、マッケン様は扉を開けようとしたが、鍵がかかっていて開かない、とススリさんに伝えている。
「蹴破ってでも、その扉を開けて!」
「かしこまりました、ススリ様」
乱暴な物言いにカチンときて。
「ちょっと玄関を蹴破って! 見た目はボロ屋で、誰も住んでいないように見えるかもしれないけど。誰かの持ち物だと考えないの!」
思わず、声を出してしまった。
「マージアさん、大丈夫よ。外の扉は壊れても、マージアさんの魔力で、しばらくしたら元に戻るから」
「ほんと? 私の魔力で壊れても共に戻るの? ……よかった、魔女様から譲り受けた大切な家だから、大切にしたい」
「マージアさん」
「ボア、スズ、トッポ、キキ、スイ、メラ、私達はいい人に大魔女様の力が受け継がれた、これからも安心してここで暮らせるな」
みんなは頷く。
「そうなる様、努力はするけど……いまの、私ではまだ力不足だと思う、みんなの力が必要よ」
「協力は惜しまない!」
「俺っちも頑張るっす!」
「必ず、力になります」
「あら、私の方が皆んなよりも力になるわ」
「いいえ、わたち達です」
「そうです」
「うんうん」
私には力強い仲間ができた。
❀
みんなと一緒に息を飲み、彼らの行動を見守った。
バギッ!と、ススリさんの命令を受けたマッケン様とアッサン様は、ボロ家の玄関を魔法と力任せに破壊した。
そして、彼らはススリさんに危険だからと、外で待つように言い先に中に入る。マッケンは剣で、アッサンは魔法で開かない扉を全て破壊して……家の中を土足で歩き回る。全ての部屋を確認して「何処も埃だらけ」「長年放置された家だ」と言っている声が聞こえた。
外で待つススリさんに。
「ススリ様、何もありませんが?」
と伝えるが。
「嘘よ! この家の何処かに魔法の本があるはずよ! 探して!」
「魔法の本?」
「わかった、その魔法の本を探せばいいんだな」
ススリさんが言った魔法の本とは……私が手に入れた魔女さんの本のこのとを、さしているのだろうか?
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