第14話

 モフモフだと思っていたけど……昨夜、出会った黒猫さんは。燕尾服、黒髪の短髪、人なっこそうな男性になっていた。その隣、同じ燕尾服、茶色髪の可愛い男性はトッポ君かな?


「マージア様、僕とトッポは呼び捨てでよろしくお願いします」


「では、スズ君、トッポ君と呼びます」


 コクコク頷く、2人の後ろ――紺のジュストコールを着た男性は……な、なんて美形。ビビール王子"なんか"よりも鼻筋が通っていて、サラサラな金色な髪、鋭い琥珀色の瞳、長身なのに……モフモフの耳と尻尾が可愛い。


(ギャップ萌え……モフモフ、パラダイスや……)


 あまりのイケメンに――ガクッと膝の力が抜けてしまい、四つん這いになってしまった。初めてお会いした彼らの前で、間抜けな格好になってしまうなんて……恥ずかしい。


 だけど、向こうはむこうで。

 側近の、2人が慌てていた。


「レオン様? こんな所で腰を抜かしてどうしたんすか?」


「レオン様? お怪我はありませんか?」

  

 目の前でイケメンさんが驚きの表情で、尻餅をついていた。その声と音を聞いて、キッチンからボアさん達もやってくる。


「マージアさん、どうしたの?」

 

「マジーアちゃん?」

「マジーア様」

「どしたの?」


 玄関先で四つん這いの私と、玄関の向こうで、尻餅をしたレオン様を交互に見て。


「あらあら、うふふっ、まぁ……そうだったの。これは報告しなくっちゃね」


 なにやら意味深な、言い方をした。


「ボアさん?」

「ボア?」


「レオン様、良かったわね。マジーアさんとレオン様、いつまでも変な格好していないで、朝食にしましょう」


「は、はい」

「……わかった」




 ❀




 キッチンのテーブルを魔法で少し大きくして、レオン様と横並びに座らされた。その前にニコニコ顔のボアさんと嬉しそうなスズ君、トッポ君が座る。テーブルの端には、これまた、ニコニコ顔のキキ、スイ、メラもいる。


(みんな、なんなの?)


「レオン様、これ全部マジーアさんが作ったのよ、さぁ食べましょう」


「あっ、あぁ……いただきます」


「お好きな調味料をハムエッグにかけて、食べてください。私はレモンマヨソースでいただきまーす」


 ボアさんはレモンマヨソースが気に入ったみたい。


「わたちはソース」

「私はケチャップ」

「マヨ、ソース!」

 

 私もレモンマヨソースを取ろうとして、同じ様にマヨソースを取ろうとした、レオン様と手が触れた。あっと、照れて、離した手をレオン様はガシッと掴んだ。


「えっ!」

「す、すまない」


 そう言いながも彼はしばらく、私の手を握って離さなかった。

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