第7話

 パンケーキを見るのが初めてなのか、彼女達にワクワク、キラキラな瞳で、見守られながら作りを始める。


 作るのは。小麦粉と卵、蜂蜜、バター、牛乳で作る簡単パンケーキ。えっと、フワフワにするコツは卵黄と卵白を分けて。卵白をコレでもかって、泡立て器で泡立てメレンゲにする、ここが重要だ。


「マージアちゃん、わたちも手伝うよ!」

「何かありましたら、お手伝いします」

「する、する!」


 彼女達は私の周りをクルクル飛び回り、可愛いことを言ってくれる。

 

「よーし! みんなでパンケーキを作ろう!」


「「おう!」」

「うん」


 キキ、スイと一緒に卵黄、小麦粉、牛乳、溶かしたバターでタネを作って。メラと卵白を泡立て器で混ぜて、蜂蜜を加えて、混ぜて、混ぜて……まぜ……しんどい、コレはやばい……ハンドミキサーない?


「たいへん」

「ほんと、大変だ」


 ぐぉぉお――――!! 気合いで混ぜて


「メレンゲの完成!」

「やった」


 最初に作ったタネと、ザックリ混ぜ合わせてパンケーキのタネは完成。


 パンケーキにジャムをかけるのもいいけど……アイテムボックスの中に何かないかなぁ? ゴソゴソ探ると、真っ赤なリンゴが入っていた。

 

 これを切って、パンケーキの横に並べる?

 それとも、砂糖をかけて炒める?

 

 うーん。リンゴで何かいいレシピないかなぁ?


 キッチンに一冊の本がポンと現れ、パラパラとページがめくれて、リンゴ煮のページで止まった。リンゴ煮かぁ、いいけど、それを作るのに使うレモンがあったかな?


 ゴソゴソ。


 お、アイテムボックスの中にあった!


 リンゴ煮はそのまま食べても美味しいし、ヨーグルトに浮かべてもいい。リンゴ煮で決定! まな板と包丁を水で洗いリンゴを切って蜂蜜とレモン汁、水をお鍋に入れて。赤い魔石に触れコンロに火をつけ、どうにか魔石を触り、弱火にした。


(ふぅ、魔石コンロの操作難しい)


 ふわふわなパンケーキを焼くため、フライパンにバターを溶かして、パンケーキのタネを流してフツフツしたらひっくり返す。


 おお! メレンゲと混ぜたから、ふわふわなパンケーキ!


「うわぁ、いい香り」

「美味しい香りです」

「うまい、……じゅるっ」


 そろそろ、リンゴ煮の方ができるかな?

 弱火にかけた、鍋を除いた。


「おお、出来た! みんななぁ、リンゴ煮の味見する?」


「「する!」」

「たべる」


 小さくスプーンに乗せると、パクッと食べるとみんなの頬が緩む、美味しい表情!


 やっぱり料理って楽しい。

 このキッチンも使いやすい。

 

 お皿にふわふわに焼けたパンケーキを乗せて、リンゴ煮を添えた。


「よし、完成! キキ、スイ、メラ、さあ食べよう!」


「やったぁ!」

「楽しみです」

「お腹すいたぁ!」


 キッチンのテーブルに焼き上がったパンケーキのリンゴに添えを置いた。


 


 

「「いただきまーす」」


 みんなで声を合わせフォークを握った。そのとき――どこからか「まあ、美味しそうな甘い香り。みんなぁ~私も混ぜてぇ」可憐な女性の声が外から聞こえて、魔法陣と共に緑の葉が庭に舞った。


「なっ、なに?」


「ひよぇ!」

「きゃっ!」

「およ?」


 キキ、スイ、メラはそれをみて、庭が見える窓まで飛んでいく。私もその後を追って窓を覗いた。庭に突如出来た魔法陣が消えると、そこに私より薄いグリーン色の長い髪、同じ色の瞳、薄地のドレスを着た女性が現れた。


(綺麗な人……)


 驚く私達をよそに、その女性は窓にいる私達に手を振り。


「初めまして、エルフのボアで~す。貴方が新しく魔女様になった人よね〜よろしく!」


 満面な笑みを浮かべて挨拶して、玄関から「おじゃまします」と、入ってくる。


「こんにちは」


「こんにちは、はじめまして――新しく、ま、魔女になりましたマジーアです。ボアさん、よろしくお願いします」


(この人、色白で足長っ! モデル並みにスラっとして綺麗な人だ……)


「マージアさんよろしく〜! それで、みんなは新しい名前を、もらえたかなぁ?」


「はい、先生。わたちの名前はキキです」

「ボア先生、私はスイです」

「メラだよ」


「キキ、スイ、メラですか、とても良い名前をもらえましたね。青空学校のお昼寝中に『魔女様に呼ばれたから行くね』って消えちゃうから、びっくりしたわ」


「わたちも、びっくりした」

 

「いきなり体がピカッて光って、気付いたらマジーア様の所にいたんです」

 

「そうそう」


 キャッ、キャウフフと話しだす可愛い精霊と、綺麗なエルフさん。


 私はそれを眺めて、ファンタジーって最高と。

 婚約破棄して良かったと、ニンマリした。

 

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