第2話

 くすんだ青から、緑色の髪。

 いきなりの、イメチェンだ。

 

 食堂での夕食のとき、お父様とお母様は私を見ても、何も言うことなく。さっさと、食事を終えると各々部屋へと戻っていった。周りの使用人達も同じ態度だった。

 

 んー、いろいろ聞かれるよりは……いいかな。


 入浴と寝支度を終えて、ベッドに転がり。

 もしや、ファンタジーゲームの様に『ステータス画面が出るんじゃない?』と思い付き試した。

 


「ステータスオープン!」

 


 そう呟くと、目の前にステータス画面が現れる。


 名前・マージア・グラシエ(18歳)

 職業・緑の魔女

 レベル・520

 体力・3050

 魔力・7702

 攻撃力・2502

 防御力・5507

 俊敏性・572

 

 スキル・鑑定・無限収納箱・料理・調合・隠密・全魔法属性・毒無効・麻痺無効・結界魔法・身体強化・魔力消費軽減

 固有スキル・思考の種生産 薬生産


 あはは……なに、このチートの様な数字とスキルの和は? 凄すぎるよ、魔女様。


(スキルは鑑定と。お、この無限収納箱って、アイテムボックス? 隠密って、なんだか忍者みたいだし)


 こ、この隠密のスキルを使用すれば、ビビール殿下とあの子との浮気現場をお父様が無駄に買った。魔導具、記録機に記録できるのでは? そして、集めた証拠を元に殿下をおど……見てもらって、国外追加なしの婚約破棄だけにしてもらう。


 婚約破棄まで1ヶ月あまり、私は魔女さんから貰った隠密スキルを駆使して、浮気の証拠の数々を記録機に記録した。

 


 ☆

 


 今宵、学園最後の舞踏会が王城で開かれた。

 ビビール・ローレンス殿下は婚約者の私ではなく。ヒロイン――男爵令嬢ススリ・ワレーンスをエスコートしながら、颯爽と会場へと現れた。


 ついに婚約破棄されて自由になれると、ドキドキしている私の前に立ち、その青い瞳で睨みつけ。


「公爵令嬢マジーア・グラシエ今日をもって、貴様との婚約破棄をする。私の愛するススリに色々と……」


 ここより先は、乙女ゲームで知っているので、聞くのが面倒です。


「ストップですわ、ビビール殿下。私、ススリさんをいじめた事は一度もありません。それより、私、面白い場面を魔導具に撮りましたわ」

 


「「はぁ?」」

 


「この、記録機をお2人で見てください」


 私が差し出した記録機を覗いた、2人は瞳を大きくした。そこを見逃さず……ビビール殿下に『婚約破棄だけでにしていただければ。このことは黙っています』と……殿下に耳打ちした。


「うっ、マージア嬢、それは本当なんだな」

「ええ、国王陛下と王妃に黙って、差し上げますわ」


 こうして、私は婚約破棄されました。

 なぜか? 隣の、ススリさんは納得いかない顔をしていましたがね。



 舞踏会が終わり屋敷に戻ると、婚約破棄を知ったお父様に出ていけと言われた。まあ、想定していたけど……少し、寂しく、心が痛んだ。部屋で1人……泣かないように唇を噛み締め、必要な物をアイテムボックスに詰め込んだ。


「クヨクヨしても、仕方がない!」


 私はこの日のためにと買っておいた、質素なワンピースを着込み、髪を結い上げた。この世界の両親とは……余り仲は良くなかったけど――これでサヨナラです。


「さてと、行きますか」


 庭園に出て、あの日見た地図を思い出す。

 次に、庭に立てかけられた竹ぼうきを手に取る。


 ――やっぱり、魔女といえば竹ぼうきだ。


「ただの、マージア行きまーす!」


 思いっきり地面を蹴ったとたん、体がフワリ浮き上がった。

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