第31話 とにかく奴隷です

「お帰りなさいませ、ご主人様」


 家に帰ったら、メイドさんがお出迎えしてくれる生活って最高だな。

 ミントちゃんである。


 まぁ、1Kのアパートの極狭玄関ってのがアレだけどさ。

 お出迎えどころか、すれ違うのも大変なぐらい。


 なんでミントちゃんが居るかって言うとね。


 ミントちゃんは親公認の奴隷になった。

 家に呼びつけるのは勿論、なんなら殆ど同棲している。


 一方で、木之瀬さんは親に心配されまくって、外出もままならないみたい。

 おかげでミントちゃんのストレスが凄い。


 昨日も秋葉原でミントちゃんを嬲る為のエログッズを一緒に選んだんだけど、終始不機嫌だった。


「そんなに怒らないでよ、あ、この極太君とか、どうかな?」

「馬鹿? こんなモノ、入るワケない、クズが」


 ……ちなみに、入りました。

 血がいっぱい出た。


 回復魔法は偉大だ。


 まぁ、アレは使うと気絶しちゃからダメとして、気持ち良いグッズも色々買ったよ。


 他には衣装も買った。

 家に帰ってから、早速着てくれって突き付けた。


「なに、このペラペラのメイド服、こんなの違う」

「コスプレ衣装ってそういう物だから」


 そう、メイドはメイドでも、秋葉風のミニスカメイド服である。


「はぁ、クズ、コレを着れば満足?」

「お願いします」

「……どこで?」

「1Kなんで、ここで着替えてね」

「外道が!」


 と、目の前で生着替えをリクエスト。


「あ、パンツは履かないでいいよ」

「死ね!」


 と言いつつ、着替えてくれるからミントちゃんは優しい。


「おおぉー」


 元々、西洋人形みたいにちっちゃくて可愛いミントちゃんが、秋葉風メイド衣装ってのがもう可愛い。


 ペラッ


 ノーパンである。


「殺したいです、ご主人様」


 いやぁジョークもキレキレだね!

 完璧なメイドさんじゃないか!


「でも、なんか違うんだよね。もうちょっと改造したいっていうか」

「今の時点でメイド服かどうか怪しいぐらいに改造されてる!」


 ミントちゃんはお怒りだ。

 まぁ、そうなんだけどさ。


「いっそ、メイド服の黒い部分を全部捨てちゃわない?」

「はぁ?」

「いや、コレ、この部分」

「馬鹿か? これが、服だ!」


 そう、メイド服の服である部分、黒のワンピースである。


「そこだけ脱いでみよう」

「頭おかしいの?」


 ……うん。

 ごめん、頭は手遅れなんだ。


 で、また素っ裸になって貰って、腰エプロンと、付け襟、頭につけるホワイトプリム。カフスとニーハイソックス。

 つまり、白い部分だけを装備して貰った。


 ワンポイントに襟の赤いリボンはあっていいかな。


「完成! 完璧だな」

「頭に蛆が湧いてる」

「家に居るときは、常にその格好でご奉仕してね」

「死ね!」


 おっぱい丸出しだし、後ろからみたら何にも隠せてない。

 ペラペラのエプロンは動いただけでモロに見えちゃうし。


 裸よりエッチで良い感じだ。チラリズムが俺を熱くする。


 特に、エプロンが良いね。お腹を隠し、肩紐はフリフリ、おっぱいだけ強調する感じになるのが個人的に堪らない。


 完全に仕上がったってワケだ。


 で、今日はいよいよ、半裸のメイドさんにお出迎えして貰ったんだけど。


「うーん、その格好で土下座させると、ほとんど裸と変わらないのが難点だな」

「死ね死ね死ね! ギッ」


 お尻も、背中も丸見えである。エッチはエッチだけどメイド衣装の意味が無い気がするね。


 俺は玄関で靴を脱ぐと、ミントちゃんの後頭部と背中を容赦なく踏んづける。

 いやだって、玄関狭くてすれ違う幅も無いんだもん。


 そんな狭い玄関でお出迎えさせてる俺が悪いんだけど。


「うううぅ!」


 土下座させられた上、踏んづけられるミントちゃん。

 悔しそうに唸る声をBGMに七畳の洋室に。


 俺の城に帰ってきた、だけど。


「狭いなぁ」


 持ってきた換金アイテム、それにエログッズが場所をとりまくってる。

 別に良いか、寝て起きて、ミントちゃん犯すだけだし。


 そこに後ろから追いかけて来たミントちゃんから提案が。


「ご主人さま! ご飯にしますか、シャワー? それともサンドバッグ?」


 いや、事前に打ち合わせたセリフを言わせてるだけなんだけどさ。


「はーい、サンドバッグ! ミントちゃんをサンドバッグ代わりにバチボコに殴りながら犯しまーす」

「死んでよ、もう」


 いや、そんなにハードにはやんないから。


◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



「あ、そのまま腰振りながら聞いて欲しいんだけどさ」


 ベッドに寝転びながら、俺はミントちゃんに話し掛けた。


「何、カス!」

「明日から、学校始まるみたいよ」

「え、本当!」

「ホント、木之瀬さんも来るって!」

「転校とか、しない?」

「絶対しないって言ってたよ」

「良かった」


 現在、我が波木野市は治安の低下が深刻だ。どんどん住民が逃げ出している。

 その一方で、癖のある命知らずに限っては、ヨソからどんどん入って来ている。

 もちろん、彼らに子供など居るはずもなく、居ても連れて来ない。


 つまり、学校がスカスカになりそうなのだ。


「だから、三人とも同じクラスになるみたいよ」

「ホントに?」

「さぼんな! ちゃんと腰振って、殴るよ」

「死ね!」


 言いながらも、ミントちゃんは健気に跳ねる。


「んっ! あっ! それで! 何なの!」

「ほら、学校に通う制服とか要るでしょ?」

「……明日の朝、持ってくる」

「大丈夫! 用意したから!」

「ハァ?」


 ミントちゃんは俺が用意した制服を見て、眉を顰めた。


◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 次の日。

 俺はクラスの中、一番後ろの自分の席でスマホを弄っていた。


「おい、篠崎! おまえデスゲームに参加したって、マジ?」

「あー、近藤かぁ、久しぶり。マジだよ」

「え? マジなの?」


 聞いておきながらどうなの? それは。

 近藤はビビリながら、コイツにしては控え目に聞いてきた。


「え、ど、どんな感じ?」

「端的に言って、地獄だわな。だってデスゲームから帰れる人数が決まってるんだからさぁ。まともっぽいヤツでも殺し合い、そうじゃなくてもモンスターがうじゃうじゃ」


 そう言うと、近藤は首を捻る。なんで? って顔だ。

 言いたい事は解るけど、失礼だねぇ。


「え? じゃあ、なんで? なんでオマエが生き残れたの?」

「さぁ? 運が良かったのと、頑張らないと駄目だったからなぁ、俺が死ぬのは良くても守らないといけないモンもあったし」

「それって……」


 その時だ、クラスの扉が勢い良く開けられた。


「禅くーん!」


 ミントちゃんだ。


「やったぁ! 禅君と一緒のクラスだぁ!」


 慣れ慣れしく寄ってきた。


「え? は?」


 近藤は大混乱である。

 脳の処理が追いつかない。


 そりゃそうだ、ミントちゃんが無事だったのは知ってる。

 だけど、ミントちゃんと言えば、学園イチの美少女で、俺とは接点ゼロ。

 更に言うと、ダウナー系の無口なロリッ子で知られている。


 それがきゃぴきゃぴルンルンで寄ってきたら、ビックリもするだろう。


 それになにより。


「あ、う、え? ミントちゃん、その格好、は?」

「え、変かなぁー?」

「あー、変じゃ、ないけど」


 しっかりしろ、近藤!

 変だろ普通に!


 夏服だから元々ペラペラではあるのだが、それにしたってヤバい。

 上着はおへそが丸見えなぐらい短く詰められてるし、スカートに至ってはちょっと動くだけでパンツが見える程に短い。


 普通のセーラー服でも、ここまで短くするとコスプレ衣装っぽくなるんだなって発見した次第。


「えへへ、禅君はどーお?」


 俺の席の前までやって来て、クルッと一回転。

 スカートがひらめいて、モロに見えた。


「うん、ドエロくて可愛い」

「やったぁ! ありがとー」


 ミントちゃんはキャぴっとポーズを決める。


「あうあう、え? は?」


 近藤は絶賛大パニックだ。

 パンツ見えたろ? ラッキーだったな!


 まぁ、ミントちゃんの眼中には、ないだろうけど。


「えい!」


 ミントちゃんは俺の膝の上に乗ってきた。

 座ってる俺の右足を跨ぐように、スカートが短いもんだから、パンツ越しにお股を俺のふとももに擦り付ける感じ。


「えへへ」


 いや、擦り付けている。

 ゴシゴシと、擦り付けている。


 痴女だ。


「禅君、だーい好き」


 そう言って、俺に抱きついた。


 嬉しそうに顔を寄せ、甘い吐息を吹きかけて、


 そして、耳元で囁く。


「殺してやる! 絶対に殺してやる!」


 はい、これぞミントちゃんです。


「何なの! 知恵遅れのマネをさせて!」


 まぁ、うん。

 そうなんだ、ミントちゃんには馬鹿になったフリをして貰っている。

 ところどころ無理があるし、羞恥に耳まで真っ赤に染めて可愛いね。


「何がしたい! カスめ」


 あんまり口が悪いので、こっそりと敏感な部分をギュッっと摘まんでお仕置き。


「ギッ!」


 痛そうな声を頑張って飲み込んでいる。

 偉い!


 そんな事をしていたら、近藤がミントちゃんの肩を叩く。

 襟ぐりもガバッと開いて、露出度爆増に改造されてるから、肩を叩くのに悩んでいる様が面白かった。


「ちょ、ちょっと! 藤宮さん! まずいよ」

「なにー? ミント呼んだ?」

「そんな制服、怒られちゃうよ?」

「ううん、大丈夫!」

「えぇ?」


 近藤がドン引きしているが……

 ……本当に、大丈夫なのだ。


 ミントちゃんは世界的に有名な、未曾有の大事件に巻き込まれた。

 心に大きな傷を負ってしまったのである。

 で、そのピンチを助けてくれた俺に、心身共に依存してしまった。


 禅君に見捨てられたら死んじゃう!


 そんなトラウマを抱えた彼女は、露出の高い服で俺に媚びを売らないと精神的に壊れてしまうのだ。


「馬鹿……なの?」


 昨日、ベッドの上でそんなストーリーを告げると、さしものミントちゃんも呆然とした。


「いや、ガチもガチ。ちゃんと精神科の診断書も作ったから」

「は?」


 うーん、唖然呆然。

 そりゃあね、診て貰った記憶のない診断書が出て来たら怖いよね。


「パパさんに協力して頂きました!」

「は? 嘘?」

「マジです?」


 パパさんの権力と父という立場を使えば、この程度は造作も無いのだ。


 と、そこに取り出したのがさっきのドエロい改造ミニミニセーラー服である。


「明日から、コレで登校して貰います」

「なにこれ? 馬鹿? こんなの許されるハズが」

「大丈夫、パパさんは学園に寄付も多いし、コレだけの事件だもん、精神がおかしくなっても仕方ないって皆思うよ」

「はぁ?」


 ミントちゃんは布面積のほとんど無いセーラー服を目の前に広げ……

 絶望していた。


 色々嬲ったけど、久しぶりにここまで真っ白な顔見たね。


「え? これを着て、がっこ、うに、いくの? わたし?」

「そうだよ! 許可もとってる! あ、過剰にキャピキャピして、何かって言うと俺に抱きつくのを忘れずにね!」

「……わたしの、人権は?」


 ねぇよ、そんなもん。


「あ、う……」


 ミントちゃんは一晩中、エロエロセーラー服を抱えて泣いてました。

 流石に悪い事したかもな。


 まぁ、良いか。

 クレイジーサイコレズだし。


「あ、でも、木之瀬さんも学校来るからさ、昼休みは屋上で三人で遊ぼうって約束してる」

「うぅ、奈々ぁ! 私がんばる!」


 そんな事を言っておりました。


 と、回想していたら、先生も入って来た。

 授業が、始まる。


「あー藤宮、自分の席に戻りなさい」

「はーい! 先生!」


 元気良く、ミントちゃんが自分の席に戻っていく。

 ヒラヒラミニミニのセーラー服を見せびらかしながら。


「え? マジで」

「先生、注意しないの?」

「なんか、精神的にヤバいんだって」

「マジで?」


 ざわつく、教室。

 先生は汗をかきながら、場を収めようとする。


「あー、皆も知ってる通り、藤宮は事件に巻き込まれて、ギリギリの生還を果たした、多感な時期だ、皆も気をつけてやってくれ」

「はーい❤ おねがいしまーす」


 ミントちゃんのキャラからすればあり得ない返事。

 皆も圧倒されていた。


「じゃあ、藤宮、早速だが45ページを朗読してくれ」

「はーい! 石炭をば早や積み果て、んぁ❤」

「どうした?」

「なんでも、ありません……」


 うん、何でもあるよね。

 俺がスイッチを入れたのだ。


 ミントちゃんにはあらかじめ遠隔式のヤツを入れたまま登校して貰ったからね。


 ガチで殺されそうになったけど、甲斐があった。


「中等室のぉ❤ 卓のほとりッ! は❤ いと静にて、熾熱燈のぉ❤……」


 艶っぽいミントちゃんの朗読を聞きながら、俺は木之瀬さんの席を見る。

 空席だ、まだ来ていない。


 二限から来るって言ってたけど、どうだろう?

 来て欲しいなぁ……


 来てくれなかったら、俺、ミントちゃんに殺されるんだよなぁ……


 ミントちゃんが取った二つ目のスキルさぁ。


 ≪暗殺≫ なんだもん。

 人知れず殺すスキルで、不意を突くと防御無視の攻撃となる。

 ≪変身≫とシナジーがあるよね、絶対に気付かないもん。


 はぁ、真祖の王よ。

 人は過ちを繰り返す。首輪どうしよう、付けた方が良いかな。


 でも、付けても意味無いし、流石に診断書があっても首輪は厳しいかな。


 俺の命運は、木之瀬さんに託されてしまった。

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