第24話 とにかくご挨拶
「始末しろ!」
「ラジャー」
ダンディーなおっさんが、筋肉質な男三人を従えていた。
ミントちゃんのパパさんだ。
木之瀬さんの姿は見えない。
前回とおなじルートを辿って、警部さんと出会った場所へ来てみたら、ミントちゃんのパパさんを発見したってワケ。
パーティー機能ってのを使ったんだな。三人部下を連れている。
あれ? 合計四人じゃん。パーティーは三人まででは?
……二つのパーティーが運良く合流出来たって事か。
つまり、既に一人死んでいる。油断したのかな。
それにしても羨ましい。四人で共闘出来たらそりゃ強いよな。
「ちょ! ちょっと待ってくれ俺は!」
「ゴミめ」
しかし、倒しているのがモンスターではなく人間ってのは頂けないね。
床に転がされたのは、不良少年だ。
見覚えがある。街ですれ違った奴だろう。
どくどくと血が流れ、ハッキリと殺されていた。
途中からしか見てないが。
たった一人のヤンキーが、傭兵部隊三人に突っかかるかね?
問答無用でぶち殺したんじゃねぇの? 嫌な予感がする。
「どーもっす」
部屋に入るなり、ご挨拶。
武器はちゃんとしまっているし、深々とお辞儀まで決めた。
「……やれ」
なのに、パパさんは厳しい。
あー、この人ルールを正しく理解してるわ。
そうなのだ。このゲーム、結局最後にはゲートの奪い合いになる。
だったら最初からぶっ殺しておいた方がリスクが減るんだな。
無防備な弱そうな奴でも、殺しておくに損はない。
あーヤバいっす。相手はガチのプロ。
ただ、傭兵たちの装備がしょぼいのが助かる。
銃はないし、防弾チョッキは取り上げられて、タンクトップ一枚。
ズボンは防刃だろうし、靴は立派な軍用ブーツだけど、それならステータスのあるレンジャーブーツを履いた俺の方が上だ。
ステータス差もあるし、三対一でも戦いにはなるだろう。
と、思ったら傭兵は一対一でやるらしい。
なるほどね、シロウトには一人で十分ってか?
「シッ!」
傭兵は、俺のそばまでやってくるなり、いきなりローキックを放って来た。
動きは明らかにやってる奴のモノ。
ちょっと格闘技を囓って解ったんだけど、ローキックって躱せないっす。
ジャンプで躱すなんて論外だし、大きく避けるぐらいしかない。もちろんそんな間合いで打っては来ないので事実上、必中です。
プロは足を上げ、膝や脛で防御するらしいけど、無理過ぎる。
だから、受けた。
太ももでモロに喰らった。
「あ?」
「よいしょっと」
でも効かねぇんだ。
お返しにガントレットでぶん殴る。
一発で崩れ落ちた。
やっぱ、ステータス差がでかい。
きっと、現実じゃ俺がどんなにパンチを振り回しても一発も当たらないんだろう。
でも、あんなに良い蹴りがクリーンヒットしても怯みもしないんじゃ、そりゃ格闘なんて成り立たないわな。
体格から見てもありえないもん。経験者ほど混乱するハズだ。
「キサマッ!」
「油断するな! やるぞ!」
しかし、相手はプロ。
すぐに切り替えて二人掛かりで迫って来た。
流石に俺も武器を抜く。
虎の子のメイスを左右に細かく振って牽制した。
「いや、見逃して欲しいんすけど? これ以上やったらぶっ殺しますよ?」
ちゃんと、警告はした。
したのだけど……
「…………」
無言である。
完全にやる気だ。
プラプラと振り回すメイスを、サッと掴んで取り上げようとしてくる。
だがなぁ。
「あ?」
その手がグチャグチャの複雑骨折だ。
聖属性のダメージだっけ? 人間にまるで効かないってハズも無いよな。
軽く触っただけで、ダメなんだ。
「はい、お疲れ」
呆然とした所を殴って終わり。
もう一人は咄嗟にヤバいと距離を取ろうとしたが、ダメ。許さない。
踏み込んで、メイスで軽く小突いたら、肋骨がボキボキ折れる嫌な感触。
一発ダウンだ。
「えーっとまだやります?」
一応聞いてみたけれど、既にパパさんはダッシュで逃げていた。
判断が早い。
まぁ、いいけどね。
おれはその背中に呼びかける。
「ミントちゃんの事は、俺に任せて貰えますかー?」
するとまぁ、パパさんは鬼の形相で振り返った。
「まさか、きさまがキラーか?」
いや、違うけどさ、違うけど。
「似たようなモンですかね」
「くっ!」
向かってきたパパさんを昏倒させた。
まぁ変に動き回られて、勝手に死なれても困るしね。
保険にはなるかもなぁ。
今はとにかく木之瀬さんを見つけないと……
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