第23話 とにかく大暴れ
YO! YO! YO!
良い子のみんな! ご機嫌なビートを刻もうぜ!
HEY! HEY! HEY!
二回目ながら、ビビるね。
気がついたら真っ暗なんだもん。
恐怖心を忘れるためにテンションはアゲアゲで行く!
石棺の蓋を勢い良く持ち上げて、クイックイッっと腰を振る。
アレだな、ノリノリのテンションかと思ったけど、これサザエさんのタマだ。
「ニャー」
鳴き声をあげながら、駆け下りて壺をメイスで一気に破壊。
「うひょー」
一振りで全部の壺が割れた。
気分は爽快。釣果はションボリ。
金の指輪が一つだけ。イェイ!
今回は薬と換金アイテムを中心に集めようかなと思っている。
そう考えると、幸先は悪くない。
武器防具は間に合ってるからね。
「はぁ……」
急に鬱が来た。
これ以上、自分を騙せない。
むりやりに躁にしても、やっぱり長続きせんのよ。
でも、デスゲームに参加するってなると、大丈夫と解っていても恐怖心がね?
服も頼りないし。
実は今回もジャージ。
下に鉄板でも仕込んでみたんだけど、綺麗に取り上げられている。
持ち込みはできないみたいね。
キラーさんのマネをしてみたんだけどダメか。アレはレア装備かな?
そんで、テレビで見る傭兵さん達は防弾チョッキみたいのを着込んでいたけれど、一体どうなってしまうんだろうね?
まぁ、いいや。考えても仕方が無いし。
次の部屋に、さっさと進む。
さぁ二回目のデスゲームの開幕だ!
「いやーあの時の俺、ツイてたなぁ」
最初の部屋から、スケルトンが二体、ゴブリン一体、居るでやんの。
この構成が前回なら、即死だったよ。
こんなパターンもあるのか。
装備無しで三匹を相手にするのは無理ゲーだ。
一対一と、三対一じゃ、難易度が全く違う。
装備なしだとスケルトンのしょぼい長剣(手に入れた時はエクスカリバーみたいに思っていました)ですら即死の可能性がある。
ゴブリンの棍棒だって同じだ。痛いのを喰らうと、一撃で戦闘不能。
今? ノーダメージだよ?
俺はスケルトンの大振りの剣をガントレットで受け止める。
カァンと軽い音。でメイスのお返しだ。
――ドォン!
爆発した。
一撃で粉々。完全消滅。
機能停止じゃなくて、消滅。
コイツも死者。聖属性が弱点のところATK45のメイスなんだから凄い事になる。
ちなみにアクセサリーは全部防御に振っている。
メイスだけでオーバーキルだから、火力なんて要らないもんな。
お坊さんが警策で肩をポンポンする感じで、スケルトンもゴブリンも死んでいく。
壺に至っては、小学生のとき柵を傘でカンカン弾いた感覚って言えば通じるかな?
撫でるだけで全部壊れる。
回復薬と金の腕輪をひとつずつ拾って次の部屋に。
「あっ?」
目が血走ったおっさんと、通路の真ん中でばったり。
「どもーっす、失礼しまーす」
小走りで横を抜けようとした時、だ。
斬られた。
斬られたのだ。
「あ゛ぁ?」
変な声(超低音)が出ちゃった❤
ガントレットで悠々受け止めたけどな。でも、気分は悪いだろ?
それでも俺は、会話するつもりナシ。急いでいるのだ。
「次やったら殺すから」
それだけ言い残して、次の部屋に。
位置関係的には、最初に木之瀬さんに会った部屋に近い。
もちろん、別の場所だけどさ。
誰も居ない、宝箱が一つだけの部屋。モンスターもスケルトンが一匹だけだ。
骨がむくりと立ち上がり、組み上がった瞬間に、軽く撫でて撃破。
飽きるほど遊んだホラーゲームみたいに退屈だ。
ただし、宝箱を開ける時ばかりはワクワクしてしまう。
中からは宝石が。
翡翠かな? 換金アイテムである。
ふーん? そこそこ大きい。
手の中で転がしてから鞄の中に。ここはハズレかな。
「それを寄越せ!」
振り返ると、そこにはさっきのおっさんが。
「それは、俺のだ!」
あー、ダメだ。イッちゃってるよ。
俺のも糞もないだろうに。
「言っとくけど、今度は殺すよ?」
ソレだけ言って、無防備に近付く。
だって、そうだ。
このゲーム。正気を無くした奴が生き残れる程甘くない。
殺してやった方が、良いだろう?
まぁ、幾ら何でも早々に殺す覚悟は湧かないだろ? どうせ、口だけだ。
だったら手を出すまでも……
って思ったら甘かった。
サクッと、長剣を俺の首に突き刺してきた。
「あっそ」
お返しに、メイスで撫でる。
それで、脳みそが飛び散った。
「グロッ!」
ヤベーわ。
このメイス、人間にも効きまくり。
そして再確認。やっぱり今の俺のDEFはヤバい。
一層で拾える普通の長剣じゃ刺さりもしない。
刺さったとしても、回復薬で治せたけどさ。
「ナムナム」
一応、祈っておこう。
このおっさんだって好きでこんなデスゲームに参加したわけじゃ無いだろう。
止むに止まれぬ事情があったに違いない。
どうせ死ぬなら、俺なんかじゃなくて木之瀬さんみたいな美少女JKに殺されたかっただろうな。
ままならないモンよ。
俺は次の部屋へと駆けていく。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
色々駆け回ったけど、木之瀬さんとは会えなかった。
ミントちゃんのパパともだ。
早々に合流するって希望は潰えた。
じゃあ、仕方ない。
一等地に乗り込むしかないわな。
「うぃーーす」
俺が飛び込んだのは、地図の真ん中。
ゴブリンメイジとゴブリンナイトが居る神殿だ。
「おー! やってるやってる。みんな元気?」
俺は神殿に悠々と飛び込む。
だって、木之瀬さんが居たら助けたいじゃん?
空気読めない狂人のフリして一気に飛び込むしかねぇのよ。
するとまぁ、戦闘中でした。
ヤンキーと、本職のヤっさんみたいな人たちが四人。
ゴブリンナイトとバチバチにやりあっている。
「おかまいなくー」
そう言って間を抜けて行く。
みんなポカンとした顔でスルーしてくれた。優しいね。
――ギーッ!
しかし、ゴブリンメイジさんは許してくれないみたいです。
ゆったりとした放物線で火球を投げ込んで来た。
「よっと!」
振り抜いたメイスが真芯を捉えた。ホームラン! 高々と打ち上がり、花火みたいに天井で弾けた。
「たーまやー」
花火じゃねぇってのにな。ノリノリで叫んでしまった。
はい、人を殺したモンでね。
完全なる躁状態です。
こう見えて、必死です。
誤解なき様よろしくお願いします。
堂々と宝箱を開ける。
≪ 銀のダガー ≫
ATK+12
銀で作られたダガー。
不死なる者への切り札になりうる逸品。
死霊や死人に聖属性の追加ダメージを与える。
うーん、しょぼくない?
クリスタルソードのATK+20よりも格が落ちるような?
でも、属性があるから良いのかな?
まぁ、軽そうだし持っていくか。
で、石碑の碑文を確認。
……これだ。
実は、これが、ずっと、ずっと、気になっていたのだ。
あの時は、半グレ三人に邪魔されて、ロクに調べる事が出来なかった。
ミミズがのたくった様な文字。
読めるはずがない。
けどよ、この碑文、スマホで確認したらどうなる?
「アタリだ!」
碑文はARで翻訳された。
元の文字に被さるように、無機質な白いフォントで日本語が表示される。
≪ 真祖の王は、誰も信じる事が出来なかった ≫
≪ ゆえに、呪物を作らせ配下すら隷属させた ≫
≪ 支配の鎖は裏切りの刃となって王を殺した ≫
≪ 過ちを繰り返してはならぬ。此に封印する ≫
封印?
この石碑に何か封印されているのか?
確かに、碑文の下には蓋のようなモノが見える。
メイスで叩くが、ビクともしない。
「うっせぇよ」
またゴブリンメイジが火球を放つが、二号ホームラン。
完全無視だ。
これ、どうなってる?
封印? 魔法で?
まさか!
「看破!」
イチかバチか。頭痛を覚悟。
すると、どうだ?
蓋が消えた。いや、まさか初めから幻惑。蓋があると思わされていた?
看破と言う魔法の意義がようやく解った。
おかしいと思っていたのだ、看破はあまりにもゴミ過ぎる。
あのスキル群は外での有用性ってのをまるで考えていないフシがあった。
回復魔法すら、回復薬の劣化になるけど良いですか? ってな扱いだもん。
そう考えると、看破ってのはゴミ中のゴミ。
ダンジョンで嘘を見破る機会はほとんど無いだろう?
そんなモンを並べて何をさせたいんだって思うじゃん?
でも、こうして隠されたアイテムを発見できるとすれば、他の魔法と同じ、とまでは言わないが、試しに取得しても良いかも? って程度の存在になるわけだ。
だとすると、このアイテムは有用のハズ。
そうじゃなきゃワリが合わない。
とにかく、中のアイテムを確認。
≪ 隷属の首輪 ≫
相手を隷属させるための首輪。
念じるだけで締める事が可能で、苛烈な痛みを与える事も出来る。
※無力化した相手にのみ、装備させる事が可能です。
え? なんか別の方向からヤベェのが出て来た。
碑文の内容からそんな気はしたけどさ。
しかも首輪は二つある。
木之瀬さんに無理矢理首輪をはめる……そんなイケない想像をしてしまった。
「ナシナシ、こんなん使わねーよ」
言いながら、しっかり鞄にしまうっていうね。
糞テンション。
「じゃあ、お邪魔しましたー」
って引き上げようとしたら、あら大変。
ヤっさん、ヤンキー混成軍が綺麗に全滅してましたとさ。
――ギャギャギャ!
勝ったのは、ゴブリンナイト!
いやー流石ですね、商品に祝福のメイスを差し上げます。
――ゴギャ
一撃で、吹っ飛んで、死んだ。
強過ぎるわな。
――ギッ? ギーッ!
そんで、ゴブリンメイジは無視。
俺は先を急いだ。
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