中国の死神/大谷 亨

 図書館でたまたま見かけ、〈あっ、これ、好きなカクヨム作家さんがオススメしてた本だ♡〉と手に取ったところ、めちゃくちゃインパクトある表紙にノックアウトされ、借りてきました。


 小説ではなく、中国の死神「じょう」について書かれた本です。

 無常というのは、寿命が尽きようとする人の魂を迎えにくる冥界からの使者であり、白無常と黒無常のペア形態がオーソドックスな形となります。

 日本ではほとんど無名だけど、中国ではきわめてポピュラーな存在で、ゲームやドラマの登場人物としても親しまれており、そういった作品の日本人ファンの間では知名度が例外的に高い的なことが最初に書かれていましたが、確かに私もドラマや小説などでその名を知りましたね。

 ただ、私が出会った無常さんたちは、なぜか皆イケメンだったから、すっかりそういうイメージが定着してしまっていて、この本で本場の無常像 (表紙) を目にした瞬間、それが音を立てて崩れていきました (笑)。

 彼らは、非業の死を遂げた元人間という設定もあったりして、とにかく見た目がおどろおどろしいんですよ。

 ほら、あちらのグィ (死霊) は死んだときの姿で現れるとかいうじゃないですか。


 まあそんな無常さんにビビビッと魅せられた著者の方が、中国でのフィールドワークに基づきながら、無常の歴史的変遷をたどり、妖怪から神になった過程や背景にある民間信仰の原理を明らかにするという非常に興味深い内容で、解説も旅行記のエピソードも、とても面白かったです。

 フィールドワーク中に撮られた写真がたくさん載っていて、それらを見るのも楽しかったですね。


 前に読んだ『おはしさま』に出てきて気になっていた台湾の妖怪・の話もあって、無常との思わぬ繋がりに驚きましたし、中華エンタメをより楽しむのに役立つ一冊でした。

 引用・参照文献に面白そうな本が並んでいたので、今度そっちも読んでみたいです。

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