八王子怪談/川奈まり子

 夏だから、というわけではないですが、怪談本を読んでいました。

 タイトルのとおり、東京都八王子市限定の実話怪談本です。


 出たときからずっと本屋に平積みされていて、すごく気になっていたのですが、正直、この手の本買うのって、あまり気が進まないんですよねぇ。

 いや、怖いからでなく、つまらなかったらヤだなって理由なんですけど (笑)。

 とにかくそういうわけで、〈図書館で見つけたら、借りて読むことにしよう〉と心に決め、このたびようやくそれがかなったのです。


 家族も寝静まった深夜、時折聞こえてくる青葉木菟あおばずくの声を耳に、ひとり黙々と読んでおりましたが、とっても面白かったですね。

 ご当地本だから地名が具体的に書かれていて、いろいろイメージしやすかったです。

 八王子に詳しくない方でも、Googleマップなどを見ながら読めば、より楽めると思います。


 それに、有名心霊スポットにまつわる話が多いから、自分がそれを知ったときのこと──主に小中学生のころのことや、本に書かれていないエピソードを思い出したりして非常に感慨深かったです。


 例えば、鑓水やりみずにある八王子2トンネル。

 以前、どこにあるのか調べてたとき、一緒にスマホ見てた子が「あっ、ここは!」っていきなり叫んだんですよね。「このトンネルがある道、学校で絶対通っちゃダメって禁止されてるとこだ」って。

 その子は、トンネル近くにある学校に通ってたんですが、入学してすぐそれをいわれたそうです。

 普通の道なのに、なぜでしょうね?

 その学校の裏は山と繋がっていて自由に散策出来たけど、途中注連縄しめなわが張ってあったりして、いかにもいわくありげな感じがした──なんて話もついでに聞きました。

 ちなみに、バイパスをはさんで学校の向かいにあるのが、全国でも五本の指に入るという (※諸説あります)Sクラス心霊スポット・道了堂跡どうりょうどうあと

 この本には、殺された堂守どうもりに関する新たな事実も書かれていたから、それだけでも読む価値あると思います。


 それにしても、東京の一都市に過ぎない八王子に、これだけ多くの怪談・心霊スポットがあるのはすごいですよね。

 まあ、鳥取県より人口が多いみたいですし、それだけ人がいれば、奇妙な体験をする人がいても、おかしくないのかもしれませんが。

 長い歴史を持ってもいますから、八王子城攻めや八王子空襲など、わざわいもあれこれ起こるでしょう。

 江戸時代には刑場もありましたしね。

 この本には出てきませんでしたが、大和田刑場があったらへんも、立派な心霊スポットです。


 最後に、本から得た教訓をひとつ。

〈心霊スポットには、興味本位で近付かない〉

 もともと、心霊スポットに興味はあっても、肝試しに来たヤンチャな人たちと鉢合わせしたら怖いなぁと思って、わざわざ行ったことはないですが、やっぱり危険な場所だと改めて思い知りました。


 心霊スポットには近付かない。

 そうすれば、本に出てきた人たちのように、死にいたることもないのだから──。

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