第1部:天才はかくして配信をスタートした
第7話:ユイさん?
突如として始まった命綱もなければパラシュートもなしでのスカイダイビングだったが、幸いにも?地面まであと数十メートルと言ったところで大幅に減速し、ゆっくりと地面へと降り立った。
別に高いところも早い乗り物も苦手ではないが、今回はちょっとした恐怖を感じた。
降り立った場所は町のど真ん中にある噴水広場。他の人も次々に降り立ってくるわけだが‥‥他の人は普通に転移してきているように見える。他の人には転移してきたようにしか見えない‥‥わけでもなさそうだ。
誰一人として怖い思いをした、と思わせるような表情をしている人がいない。
百人近くになるのだ。最低でも一人二人は高所恐怖症だったりする人がいてもおかしくないはずだ。そうでなくとも、多少は顔色を変えている人がいてもおかしくないだろう。
と、言う事は、称号の影響だろうか?
そんなことを考えつつ、今朝ユイからかかってきた電話の内容を思い出す。
『ステータスいじり終わって、ゲームが開始したら噴水広場に出ると思うからそこで待っててね』
「了解。噴水広場で待っていればいいんだな」
『私が行くまで知らない人についていったら駄目だからね!』
「俺は子供か!」
こんな話が合った。
幸いにも噴水の前にはベンチが置いてある。そこに座って待たせてもらうとしよう。
10分が過ぎ———
「ねぇねぇ、お兄さん」
「私達と一緒に外に行かない?」
「ごめんね。彼女の事待っているんだ」
伝家の宝刀『彼女』だ。時折外を出歩くとナンパに合うんだが、その時はこの一言で黙らせることにしている。
「なーんだ。つまらないの」
「やっぱ、顔の良い人は彼女いるのよ」
そんなことを話しながら去っていく女性二人。
勝手に話しかけてきておいてつまらないとは失礼な、とは思わなくもないが、正直彼女たちに全く興味が湧かないので何とも思わなかった。
その後も待つこと15分。
ようやくユイが現れた。
真っピンクの髪と青色の目をそえて。
なぜその色にしたのか、小一時間ほど訊きたいが、今はそんなことしている時間ももったいない。
「ようやく来たか」
「ごめんねぇ。βの時よりも圧倒的に種族とかスキル増えてて迷っちゃった」
「で、やっぱりエルフか?」
「うん。やっぱり魔法といったらエルフかな、って」
「じゃあ、俺の選択も間違えてなかったみたいだな」
「ミトは何を選んだの?」
「半天使」
「‥‥なんて?」
「半天使だ」
「何その種族!?そんな種族見た限りなかったけど!」
「神々の事当てたら選択肢に出てきたんだ。もしかしたら人族以外でも出たのかもな」
ユイは顔に手をあて、考え込み始めた。
というか、ユイがβテスターをやっていたとは‥‥
少し前に早く帰ることが多いとは思っていたが、そんな理由だったとは。てっきり買い食いでもしていたものだとばかり。
「何か失礼なこと考えられた気がする」
ジト目を向けながらそうつぶやくユイ。
こういうとき、女子の勘は鋭いものだ。
「気のせいだろう。で、一緒に始めようだなんて、何をするんだ?」
「じゃあ、始めようか————」
‥‥うん?‥‥何をだ???
「————ゲーム配信」
飽き症の天才は飽くなき無限の世界へと旅立つ 聖花シヅク @shiduku102
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