第6話:挑戦者

 MONDOはイタリア語で世界という意味だ。まあ、この世界の名前はタイトルに合わせたのだろう。


「まず前提として一つ、絶対に忘れないで貰いたいことを言っておくね」


 突如真剣な顔をしたセイの纏う空気に、一瞬飲み込まれた気がした。


「この世界で起きたことは全てなかったことにはならないし、死んだNPCは生き返らない。犯罪はゲーム内でとは言えきちんと罰せられるし、善行はキチンと評価される」


 これは、現実と変わらない、もう1つの世界だといっているのだろうか?


「もちろん、プレイヤーとなる君たちにとってはゲームの世界かも知れない。でも、MONDOに住む人々にとってはこの世界が現実で、一人一人生きていることを理解して欲しい」


 道徳の話をされている様にも感じるが、言われていることは幼子でも理解していることだ。

 勿論、何もなければ人を手にかけるつもりなどない。当然のことだが、窃盗などの犯罪に手を染める気もない。


「そして最後に、君達プレイヤーにとって第二の世界となる、新たなもう一つの世界をしっかりとその目に焼き付けてほしい。そして、何処までも挑戦してほしい」


 その言葉を最後に、セイの纏う雰囲気が消え、その空気のせいか圧迫されているように感じていたイメージが消えた。


「ふぅ。これは何度やっても慣れないね」


 そう言うセイはスキルなどの説明をしていた時と変わらぬ空気を纏い、先程の圧倒的なまでの強者の雰囲気は何だったのかと思わされるほどだ。


 うん。そうだな————


「うんうん。君は他の者たちとは格が一つ二つ違そうだね」


 この世界での新たな楽しみ————


「私も君が何処まで強くなるのかワクワクしてくるよ」


 俺が飽きないための新たな目標————


「この世界は頑張れば頑張った分だけ強くなれる」


 俺がずっと追い求めていたもの————


「ここはそんな————無限に広がる世界だ」


 この無限に広がる世界————

 無限に成長できる世界————


「この世界だからこそ綴れる物語」


 飽きの無い世界だからこそ————


「私達は挑戦者をずっと待ち続けている」


 見つけることができた————


「ようやく俺は挑戦する側に回れる様だ」


 セイの回りに一人一人と姿を現す者たち。

 きっとオリンポスの神々だろう。

 彼等彼女等は口をそろえて開く。


『挑戦者よ、強くなれ!さすれば、我々が何処までも立ち塞がる難敵となろう!』


「ああ、俺は挑戦者だ」


 その言葉を最後に俺は————産まれて初めてのスカイダイビングをすることとなった。

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