第2話:リンク・オン
ゲームを始めることを決めてから1週間ほどが過ぎた。
両親に頼み込み、成績を大きく落とさない(順位を落とさない)ことを条件にVRヘッドセットと『Mondo Infinito[モンド・インフィニット]』のカセットを買ってもらうことができた。金を貯めていないわけでは無いが、色々スポーツをやるとその度にボールやらシューズやらラケットやらユニフォームやらに金がかかるので頼めるところは頼むようにしている。
順位を落とさないことは、日々の授業をちゃんと聞いていれば問題ないので気にすることは無い。
ユイも俺と同じく成績はいい方なので問題ないだろう。
「さて始めるには、ヘッドセットにカセットを入れ‥‥これで大丈夫だな」
開始時間は元から確認してあるので問題ない。
周囲には水やエネルギーバーの準備も終え、ヘッドセットを被りゲームを始めるために呟く。
「『リンク・オン』」
徐々に目が閉じられていき、完全に閉じたことを認識すると同時に意識を落とした。
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意識を取り戻し、そこにあったのは黄金郷‥‥などという事はなく、あったのは特に何もない真っ白な空間だった。
そして、そこには一人の女性がいた。
「やぁやぁ、初めまして。私の名前はセイ。全部で12柱の神の1柱を任されている。まあ、一言でいうなら神様?」
「初めましてだな。俺の名前は‥‥そうだな『ミト』だ。よろしく頼む」
「了解。ミト君だね。じゃあ、
「ああ。それで頼むよ」
セイは女性的な見た目をしていて、髪には白百合の花飾りをつけている。
また、手には王笏を持ち、目は牛目のようになっている。
セイという名前に白百合の花飾り、王笏に牛目‥‥
「『
その言葉に、セイは体を一瞬強張らせた。
「その反応だと間違ってないみたいだね」
「まさか、一瞬でばれるとは思わなかったな‥‥他の人たちの所では私を含め誰もバレていないというのに、私が真っ先にバレてしまうとわね。なぜ分かったのか聞いてもいいかな?」
「このゲームのタイトルがイタリア語で名前がセラ————イタリア語で6だというのが1つ。手に持っている王笏が2つ目。百合の髪飾りが3つ目。直接的には関係のだろうが、牛目になっているのもヒントになっているんだろうからそれで4つ目。あとは12柱の1人だといっていたから『オリンポス十二神』の中から一番あっていそうなのがどの神か考えたら分かるだろう?」
「なんだろうね。何一つとして間違えていないのに、君にそう言われると無性にイラっと来たよ」
よく誰かに解説を頼まれるが、初めてした相手には大抵同じことを言われるよ。解せぬ。
「その少しむっとしたような表情を見て、少しは溜飲が下がったかな」
「まあ、そんなことはいい。ゲームの説明に戻ってくれないか?」
「君にそれを言われるのは何だか釈然としないが‥‥今回は神の寛大な心で置いておくとしよう」
「寛大な、とか言っている時点で器の小ささは知れているな」
鼻で笑いながらそう言ったミトに対してセイはギロッと睨んだが、すぐさま表情を取り繕うと話をすすめた。
「じゃあ、まずは容姿の設定をしてもらうか。身長は最大で上下5cmまでしか変化させることができないよ。また、リアルがバレることを避けるため、最低でも髪色と目の色だけでも変えることを推奨しているね」
「身長は162cmのまま、体格も変更なしでいい。髪色は薄めの青、目の色は赤で頼む」
「了解————こんな感じになるけど大丈夫かな?」
そう言うと、セイの隣に等身大の自分が現れた。現実と違うのは髪と目の色だけだ。
「ああ、これで大丈夫だ」
「じゃあ、次にステータスの設定に入ろうか」
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