第4話
雪side
あの日から架純の態度がおかしくなり、俺と仲がよかったはずなのに俺のことを誰ですか?と聞いてくるようになった。名前を言えば思い出す素振りを見せるが最近は思い出すのに必死でいた。それに大学に来ることもほとんどない。俺は思い切って架純を病院に連れて行くことにした。
「多分一時的な記憶障害でしょう。薬の影響もありますし……」
医者は淡々と喋るが、当の本人はちんぷんかんぷんだ。
俺は架純を連れて帰り、カフェに寄った。
「うわぁ!なにこれ!?」
架純はフラペチーノを目の前にして目をキラキラさせている。俺はそんな架純を親のような複雑な心で見る。
「美味しい〜!!えっと……雪さん?」
「なぁに?」
「私……記憶障害なんですね……」
「そうだね……」
「ほんとにごめんなさい!!」
「いやいや!こればかりはしょうがないから!」
「私悔しいんです……思い出せないのが」
「大丈夫。架純が思い出せなくても俺が覚えているから」
「だけど……」
「架純は治療に専念してくれればいいから、ね?」
「すみません……」
「ほら、敬語禁止!いただき!」
「あ!私のフラペチーノ!!」
飲んだフラペチーノはなぜかしょっぱくて心がキュンっと悲しんだ味がした。
次の日もその次の日も架純はどんどんおかしくなっていった。記憶障害でもあれば、歩けない日。ご飯もまともに食べれない日も。
ある日それは突然俺をどん底に落とす悲劇が起きた。
「架純〜、来週ここ行こうよ〜」
「え?前もそこに行きましたよね?2日前に」
「え?それは1か月前だよ」
「ちがう……!それはちがう!!だって……!私覚えてるもん!」
「架純?架純!!」
架純は急に倒れ俺は急いで救急車を呼ぶ。
「頑張って……架純」
意識を失っている架純を必死に呼ぶ。だけど架純は目を覚まさない。
「植物状態?」
「えぇ、脳に異常が出ている。だけど回復の見込みはある。そのかわり……何年も眠り続けていつ起きるか……分からない」
「それって……」
「賭けね……親御さんに話してくるからあなたはここにいてね。」
俺はぼーっとそのまま窓を見つめた。植物状態?架純が目覚めない……?俺は状況がのみ呑めなかった。すると架純の両親がやってきて
「雪くん!」
「架純のお父さん!お母さん!」
「迷惑をかけてすまない!」
「いえ!そんな!」
2人は謝ってくるが、俺は架純が好きで一緒にいる。
「君には芸能界の仕事もあるだろうし、ここでスキャンダルになると困るだろう……だから」
「これ以上架純に関わらないで……」
「……嫌だ……俺には架純しかいないんです!俺架純が目覚めるまで何年も待ちます!」
「こればかりは君だけの問題じゃないんだ」
「お父さん……」
「雪くんの気持ちも分かるわ。だけど目覚めたときまた架純があなたのことを覚えていなかったら……?」
「また俺が最初から記憶を一緒に作ればいい」
「雪……」
と架純がつぶやいた。
「架純!!架純!」
呼びかけてもまだ意識がない。
「ひとまず3人で賭けてみよう。架純が目覚めことを」
俺たちは頷き、覚悟を決めた。
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