密かに再会に驚く

 彼が、目を大きくして、私を見ている。

 それもそのはず。


 


 でも違う。

 これは

 本当の自分は


 このヘッドホンは、自分が嫌だと思う音を遮断するため。

 大きな音、突然の音、キーンとくる音、通学中に利用する電車の音、賑やかな話し声などー…数え切れない音が苦手。

 でも、唯一、耳に入っても、嫌に感じないことがある。


 それは、


 初めてだった。

 人の声も苦手に感じるから、私はずっと1人で過ごす。

 でも、初めて彼の声を聞いた時、とても心地良く感じた。


 柔らかくて、ツンとしていなくて、低すぎず、でも男らしくて、あたたかみのある優しい声。


 その声を聞きたくて、図書館に通うようになり、彼と仲良くなった。

 夏前に引っ越しを機に、新しい学校に転入したが、まさか彼がいて、同じクラスになるとは思わなかった。

 世界は広いが、私には狭く感じた。

 嬉しくて嬉しくて、顔に出そうになって、ヘッドホンも外したくなったけど、勇気は出ず、朝限定のいつものムスッとした顔に。

 放課後、話せるかな。怖いな。

 こんな

 チクリと心が痛んだ。

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