4つの小箱

佐々木 連

第1話 4つの小箱

石田は配達人である

夕方 仕事が終わって事務所に戻る

仕事の終わりを時計が告げている

今日も一日が終わる 夕闇が近づいている気配

どっかでたまには のんびりしたよなーあ


どっこらしょ 椅子に座って

もう長い間 こんな事の繰り返し

さあ 帰るか


とぼとぼ 暮れかかった街をあるく

おじさん!

思わず その声に振り返ってしまう

おじさんと言われて 反応してしまう

そんなに老けていたっけ? 

我ながら 苦笑い


振り返るとそこには若い女性が こちらをみつめている

俺かい?

少しの間

そう おじさん。。。


これを運びたいのだけ手伝ってくれない?

俺かい?

少しの間

そう おじさん。。。


うーん 突然言われてもなあ 俺とどこで合ったけ?

うん ここで今

まあいいか 別にこの後用事があるわけでもないのだし

遠いのかい 遠くは無理だよ

住所がここに書いてあるの

一緒に配達してくれない?


まあ 暗くなってきているし 

女性の一人というの何かと問題あるし

どこだい?

見てみると見慣れない

私が連れてゆくので おじさんは荷物をもってついてきて


荷物が4つ そんなに大きくもなく

重いのか?

いや そんなこともない 抱えて運べる


じやあ 行きましょう

さっさと歩き出す

おいおい 待ってくれよ


歩く 歩く どれくらい歩くのか

どこまで行くんだい?

まずはあそこ

まず?

おいおい 4つとも違う届け先じゃないんだろうなあ?

遠くに ぼっとした灯り


割に普通の家 気配はない

ごめんください

返事はない

誰もいないみたいだなーあ


そこに置いとけばいいのよ

いいのかい?

荷物を下す

違うの1つだけよ

ひとつだけ?

ああ やっぱり 別々の届け先なんだなあー

ため息も出る


それじゃ 次いきましょう

さっさと歩き出す

おいおい 待ってくれよ


歩く 歩く どれくらい歩くのか

次はどこだい?

次はあそこよ

目を凝らしてみるがはっきりわからない

ぼっと ほの明るい場所?


ドカーン。。。。。。


突然壁にぶつかったようだ

あ あ ぁ あ

スローモーションになったように

思わず荷物ともども倒れこんで 尻もちをついてしまう


なんだコレは

壁か? 暗くて見えない

手で探ってみる

探ってみる


もう少し右手のほうよ

彼女をみると 軽やかに微笑んでいる

あったドアだ

ここかな?



ドアを開けると

そこにおいてけばいいのよ 一つ

そ そうだね 一つねえ!?


まだ行くのか?

そう 後 

後?

あと2箇所 軽やかに微笑んでいる

しょうがない ここまできたので付き合うか?

今度はすごく近くだから

さあ いきましょう


歩く 歩く 近いっていったじゃないか! あいきらめ半分

歩く 歩く 歩く


切れかけの電球に写し出された

鉄製の錆びれたドア


彼女は指さす

ここかい?


ドアが重いのでゆっくり開ける

長い廊下


あらどこにいるのかしら?

誰がだい?

受け取る人?

声をかけてみる

すみませーん 荷物もって来ました


こっちだよー

響く声


どこですかーあ?

こっちだよー

こだます声


荷物をもって廊下をすすむ

まるで牢屋の様だ

鉄格子のような空の檻の部屋が続く


どこですかーあ?

こっちだよー

声の方に進む

先には灯りもある


進むと 顔を抱え込むように 男が蹲っている

荷物をもって来ました

そこに置いといてくれ


思わず ぎくっとする

まるで 自分そっくりではないか


じゃ じゃ ここに置いておきますね

震えた小声で 荷物を置いて

彼女をみて さあもうゆこうと長い廊下を戻ろうとすると

こっちから出れるわよ

近くのドアを指さした


そのドアから出る

確かに

じゃこのドアから入れば良かったのに!

なにか馬鹿らしい気分


残った荷物は1つ

次はどこだい?

次は遠いかもよ?

まだ歩くのかい?

彼女はさっさとあるきだした


歩く 歩く 歩く

もう馴れた

あと一つ

歩く 歩く


次はここ

周りを見渡すと いつの間にか森の中

森の中の一軒家


不思議だけど とてもいい気分

ドアを開けると 愉快な音楽

明るい部屋   音楽に体が反応する

踊りだす。。。




ふと 気づくと椅子に座って

小箱を持って ポカーンと口を空けて 座っている

仕事の終わりを時計が告げ続けていた



小包はおれ宛か?


包みをあけると

おじさんへ という紙切れと

大きな種が 1粒

そーか 希望の種だったんだ


(1話で完結です)

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4つの小箱 佐々木 連 @cz9615

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