第25話 哲学の道と自己嫌悪

<妹> 🩶

驚くほど、担当の弱みは見つからなかった。

一応、Twitterはやっていたが、面白い小説や映画の感想くらいしか呟いていなかった。

ちなみに、自分が編集者だとは書いていなかった。

ネタバレしないで、どういう話なのかを分かりやすく書いていて、読みやすかった。しかし、しかし、簡素な文章にならずに、作品への愛を感じた。

そういったつぶやきによって実際に読んでみた、観てみた人もいた。

中には辛辣なことを書いている人もいたが、そのコメントは無視して、しっかり感想や考察を書いている人達と交友していた。

たぶん、良いSNSの使い方なのだと思う。

最初は弱みを探していたのに、気になった作品の情報を集めているのに気づき、情けなくなった。

スマホを乱暴に置いて、漫画喫茶の飲み放題のメロンソーダを飲む。

いつもだったら甘さに脳が活性化される気になるのだが、その無闇に甘い味に吐き気を催す。

横になるが、吐き気は消えない。

気晴らしに漫画でも持ってこようと思ったが、今の調子では、何のジャンルを読みたいか、自分でも分からなかった。

何もやりたいことがない。

・・・このパターンはマズイ。

身体を動かした方がいいと考えて、ノロノロ支度をする。


深夜1時。

当たり前だが静まり返っていた。

さて、どこに行こう。

夜の店くらいしかやっていないだろう時間だ。私はお酒がダメなので、夜の店の楽しみ方が分からない。

そうなると、散歩くらいしかない。

ふと、京都には哲学の道という景色が良い2キロくらいの道があることを思い出す。


スマホの地図アプリを頼りに哲学の道に到着。


「・・・」


景色が綺麗と聞いていたが、こうも暗いとよく分からない。

木が道の両脇にあることは認識できるので、明るい時は、自然の美しいがあるのだろうけど、ただの木のシルエットにしか見えない。

せっかく着たのだからと、とりあえず歩き出す。

昔の偉い哲学者が、毎日この道を歩いて哲学していたらしい。

私には、考えるべきことはあるだろうか。

復讐・・・というか、イジワルしようと弱みを探していたら、伝え方の勉強させられた女が考えることがあるだろうか。

ある。

こんな無意味なことを終わらせる方法について、真剣に考えるべきだ。

私の心を守るには、誰かに寄生するしかない結論にずっと前に達している。

しかし、今日、担当に言われたことを今更響く。

地雷。

自分だけのための行動。

その通りだと、こうして1人で振り返ってみると認めることができる。

小学生の頃は、一応兄さんの為という大義名分があっが、20歳の現在は、自分のプライドを守る為に名誉毀損に手を染めようとした。

唯一の友人は、冷静になれば止めると、私を信頼してああ言ってくれたのだろう。

しかし、私は、担当の弱みをみつけらるたら、嬉々としてネットにばら撒いたことだろう。

兄さんの高校時代の顧問をクズと呼んでいたが、今の私もクズという蔑称が似合う人間に成り下がったのだろう。

あの人は、少しだけのコミュニティーで私の人間性を見破ったのだろうか。いっそ、あの人も小説家になればいいんだ。兄さんとは別の魅力のある小説が書けるだろう。

対して、私には、何も無い。

多少の行動力があるだけの異常者。

あの人に・・・空梨千広さんに勝てるところは、一つもない。

もう、分かった。

私には、空梨さんに対抗できない。


「・・・おばあちゃん」


この時、兄さんに助けを求めなかったことに、自分でも意外だった。


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