第23話 300円と奇跡

<兄> ♠️

300円ぴったり返してもらった。


「本当は、色つけて返す予定だったんですけど、あんまり間を上げるのも失礼だと思って・・・」


昨日のラーメン屋さんの前で待ち合せした。


「全然です。ありがとうございました」


今日も甚平なのだが、昨日とは柄が違う。

多少見慣れたからか、オシャレに見えてきた。でも、俺が真似したら痛々しい個性を履き違えたやつになってしまうのだろう。うっかり甚平を買わないように気をつけなくては。

なんとか、この人を引き留めてきちんと話をしたいが、どうしたもんか。と、悩んでいるら、「あの、お世話になった手前、申し訳ないんですが、この娘知らないでしょうか」と、向こうから話を切り出してくれた。

人探しをしてるのか。ますます漫画のキャラクターみたいな人だなぁと思いながらスマホの画面を確認すると、妹だった。


「おー」


本気で驚いたんだが、こんなリアクションしかできなかった。

ちなみに、YouTube動画の一時停止の画面だった。しかも、俺の小説を紹介してくれている回だった。


「知ってるんですか?」


少し、目を見開いて聞いてくる。


「知ってるっていうか、妹ですね」


「おー」


ご老人のリアクションも同じだった。

人間、本当に驚いたら、こんなもんなんだろう。

これ以上、驚いたら逆に黙る気がしてきた。


「あの、どんな関係なんですか」


「えっと、駄菓子屋と客です」


・・・?


「僕の止まってる旅館、ここから10分くらいなんですが、そこで詳しくお聞きしていいですか?」

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