第19話 パンと責任

<兄> ♠️

京都は、パンも美味しいらしい。

空梨がテレビで観たというパン屋のメロンパンがめちゃくちゃ美味しかった。

お茶や八つ橋、ラーメンが美味かったことは、中学の修学旅行で経験していたが、これは新しい発見だ。

他にも3個パンを買い、それを食べながら旅館で執筆する。

理想を言うなら、滞在中に書き上げるのか良いのだろうが、自分でもどれくらいの長さになるか予想できない。

一応、3泊4日で予約したらしい。

ちょっと本気を出さないといけないかもしれない。

畳の良い匂いのする部屋で、浴衣を着て高級そうな座椅子に座って小説を書く状況に、最初は恥ずかしく思っていた。しかし、2時間書き続けると、なんで小説家が缶詰めをするのに旅館に泊まるのが、単なるカッコつけなんじゃないかと思えてきた。

集中って意味だったら、新幹線の方が集中できた。

ここには、誘惑するものが多い。

温泉はもちろん、外に出れば京都という日本を代表する観光地がある。

そんな場所で集中できる人間の心境が分からない。

しかしら高い金を払ってもらって「あんまり書けませんでした」では、仕事を舐めていると思われかねない。無理矢理にでも集中しなければ。

しかし、思ったより空梨さんが見回りに来ない。

さては、自分の小説を書くので忙しいんだな。

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