第17話 趣味とマジ

<兄> ♠️

「趣味です」

声の震えは治ったが、顔はまだ赤い。


「小説が好きだから編集者になったんだから、趣味で小説を書いていても良いでしょう?・・・。あの、だから、パソコン返してくれません?」


「空梨さんが俺にこの原稿をメールしてくれたらか返します」


「原稿っていうか、ただの雑文なんですけど」


それかも、空梨さんが何やらごちゃごちゃ言っていた気がするが無視して読み続けた。


「・・・面白いです」


「は?」


普通のOLが行き倒れの謎のイケメンを拾ったことから始まる恋愛小説。

正直、こんな男いねーよとツッコミを入れたいが、そこは小説だ。フィクションだ。個性という意味では、非常に興味深いキャラクターになっている。

そして、やっぱり学があるだけあって文章が知的だ。それと同時に編集者の能力もあるので、賢い人だけではなく俺のような馬鹿も置き去りにしないように工夫している。

個人的に、割と好きな小説だ。


「続きはないんですか?」


「えっと、これはここまでしかかけてませんけど、前に書いたやつは、保存してあります」


言われて、「雑文」というデータを開くと、10個のタイトルがあった。


「このデータ、俺のに送って良いですか?」


「・・・もう勝手にして下さい」


今度は俯いているため、表情は見えない。


「っていうか、ご自分の仕事をして下さい」


しかし、そこは優秀な編集者。すぐに顔を上げて仕事をサボっているパッとしない小説家に葉っぱを掛ける。



「はい」

自分の作業に戻る前に、乗車前に空梨さんに着いて行った有名コーヒーショップのアイスコーヒーを一口飲む。

・・・確かに、コンビニのよりは美味しい気がした。

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