第15話 マゾと盗聴

<妹> 🩶

新幹線に最後に乗ったのは、高校時代の修学旅行だったか。

同級生達が異常なテンションで怖かったけど、笑顔を頑張って作っていた記憶しかない。

旅行に他者と行くということは、自分の行きたいところ、食べたいものをある程度諦める必要がある。

さらに、モチベーションや体力も違うため、もう休みたいのに無理矢理観光することになり、結果的に「やっぱり家が一番」という結論に結びつくわけだ。

家が一番なら、最初から家でゆっくり過ごしていた方が楽しい休日になるのに、人はわざわざ旅行に行きだがる。

マゾなのだろうか。

少なくとも、兄さんはマゾではない。

やりたくないことは必要に駆られない限りやらない。

だとしたら、今回の担当との執筆旅行は、必要だと判断したことになる。

京都行きの新幹線の中、数日前から考えていることをまた、手を変え品を変え考えている。

良くない思考回路に入ってしまっていることは自覚している。でも、このパターンは自覚していても避けられない。

もう何も考えたくないので、寝てしまいたいが、目を瞑っても瞼の裏を見続けているだけで、余計に頭が冴える。兄さんの心臓の音を聞いたら、時間はかかるけど寝れる予感を感じながら微睡むことができるけど、ここに兄さんはいない。

別の車両で担当と話している。

さすがに盗聴機とかは用意できなかったし、入手の方法がわからなかった。

そんなものなくても、相手と一緒に暮らしているのなら、情報はいくらでも手はある。

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