第12話 電話と心配

<兄> ♠️

「妹ちゃんのYouTube観た?」

友達から電話がきた。

仕事関連以外で電話がかかってきたものだから少しビビった。

しかも、唯一の友達からときている。

友達の名前がスマホの画面に表示されたのを見た時、事件に巻き込まれたか結婚か?と身構えた。

どちらにせよ無視するわけにはいかない。

恐る恐る電話に出た。

開口一番、冒頭の台詞である。


「観てない」


以前、こいつに教えてもらった妹のYouTube。

やっぱり身内がオフィシャルにエンタメ活動しているのを観るのは中々勇気がいるので、あれからは観ていない。


「10日連続でお前の話だぞ」


「・・・はあ」


えーっと、YouTubeで面白かった作品の感想とか分析をしてるんだったよな。それが10連で俺の作品だったってい話か。


「ありがたいなぁ」


身内の贔屓みもあるだろうけど、そんなに話題にしてくれるのは光栄なことだ。


「うん。まあ、そうなんだけど、コメント欄でそろそろ別の作品の話が良いって意見をガン無視してんのよ」


「ふむ」


それはよくない。

自分を持つことは大事だが、応援してくれている人を置いてけぼりにしたら、表現が独りよがりになる。

なんで、いきなりそんなことになった?

変わらず、食事も作ってくれるし、会話も減っていない。

俺が知らないうちにになんかしたパターンの可能性が高い。


「そうなんたな。ちょっと気を付けてみるわ」


「おー。今度ラーメンでも行こうな」


「うーい」


電話が切れる。

ツーツーツーツーツー。

相手が電話を切るまで、自分からは切らない様に心がけているものだから、この無機質な音を聞く羽目になる。

何とも不快な音だ。

さて、件のYouTubeを観てみるか。

チャンネル名は忘れたので、俺の小説家としてのペンネームで検索してみる。

・・・出た。

妹が写っているサムネの動画がたくさん出てくる。最新の動画の再生回数は、以前観た時よりも減っている気がする。

再生してみる。


「・・・」


うーん。

別に批判してないから、観ていて不快にはならないが、同じ言葉を何度か使っている。まとめれば5分で終わる話を15分かけて語っている。

コメント欄を観ると、他の動画も似たようなものらしい。

心配してくれている人もいる。

今、妹はバイトに行っている為いない。

帰ってきたら、どう接したら良いだろう?

兄から変に気を遣われてもウザいだろうからな。表情がいつもと違うところがあるか注意してみてみるか。

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